★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

天空の船・ラピュタ(前篇)

世界地図を日付変更線の上で切れ目をいれてみた。日付変更線は実際はもっと折れ曲がっているがここでは簡略化している。

       f:id:taamori1229:20201028072348p:plain

この線上を超えるとき、時計を一日分足したり、引いたりしないといけない。

 

f:id:taamori1229:20201028072400p:plain


この線の実像に迫るためにこんな実験をしてみる。

A~D君の4人が東京からニューヨークへそれぞれ別のフライトで向かう。フライトはちょうど北極点あたりを通過する。4人はフライトのルートを決めていいことになっているので、日付変更線の正体を探るべく、それぞれの思いで実験を試みた

  f:id:taamori1229:20201028072419p:plain



A君は慎重派である。日付が変わるというのがどうにも気持ちが悪かったので、北極点付近でちょっと西に迂回して日付変更線を通過せずにニューヨークに向かった。

B君は細かいことを気にしないタイプなので、普通に日付変更線を通過してニューヨークに向かった。

  f:id:taamori1229:20201028072431p:plain



C君は冒険家である。北極点は一度やり過ごした上で旋回してA君とは反対の方向から日付変更線を通過した。そして再び引き返すよう迂回してニューヨークへ向かった。

D君は好奇心が旺盛なので、北極点のちょうど真上、つまり日付変更線の端を通過してみて、ニューヨークに向かった。

  f:id:taamori1229:20201028072442p:plain


4人はほぼ同時刻にニューヨークに無事到着した。さほどフライトの距離は差がないので当たり前である。空港のロビーで一堂に会して、時計を見比べてみた。彼らはまだ時計の時差を修正していなかったのでみな一様に東京の時刻を示していた。4人はすべてデジタル表示の時計で日付も表示されていたがそれも同じだった。

4人はニューヨークの時刻に時計を合わせ、挨拶を交わすとそれぞれの目的地へと向かっていった。

さて、日付変更線を超えたり、超えなかったり、反対側から回ったり、その端を通ったりしたことはなんら影響を与えていなかったようだ。

日付変更線の正体とはいったい何なのだろうか。

ありえない机?

ネットでこんな写真を拾った。

 f:id:taamori1229:20201019154508j:plain

一見、台の部分が空中浮遊しているように見えるが実はそうではなく、中央のL字の金具が鎖を介してきちんと持ち上げてくれている。この机が本当に安定なのか、耐震性は大丈夫なのかを考えてみる。

まず、次のように座標系とパラメータを定義する。

  f:id:taamori1229:20201019154534p:plain

L字金具から受ける上方向の抗力をN、四隅の鎖からの下方向の引力をn1,n2、L字金具の位置と重心との距離をsとして、x,y軸を図のように定義した。

y軸方向からみた断面図は、

  f:id:taamori1229:20201019154605p:plain


となる。

この台の安定性するということは、まず上下に移動しないという条件から、

 f:id:taamori1229:20201019154630p:plain

と書ける。また、台が回転しないとすると、台の重心からのモーメントのつり合いの条件から、

 f:id:taamori1229:20201019154708p:plain

となる。これらより、Nを消去すると、 

 f:id:taamori1229:20201019154741p:plain

が得られる。これがこの机の安定性の条件式である。

ここで、安定性について考えてみる。四隅の鎖は台の回転の中心、つまり2か所のL字金具の接続点を結ぶ直線を支柱として回転する構造である。

    f:id:taamori1229:20201019154933p:plain


この4本の鎖は台を引き下ろそうとするだけで、押し上げようとしない。引力だけが作用する。上記の支柱という構造から鎖には上記の一方だけが作用して、もう一方はあそんでいることになる。勿論、鎖の重さは常に台に作用しているのだがその影響は追って説明する。本考察より、台が安定する条件として、n1, n2について、

 f:id:taamori1229:20201019155007p:plain

もしくは、

 f:id:taamori1229:20201019155019p:plain

のいずれかを満たすn1, n2が上記の関係式を満たせば安定となる。それは、上式において、n1、n2の項の符号がちょうど逆であることから容易に導かれるので省略する。ただ一つ問題となるのはn1, n2について、

 f:id:taamori1229:20201019155052p:plain

となる場合である。この場合、n1,n2は微少変化で鎖のあそびに相当する範囲でガタつくことになる。

この机においては上に何も載っていない状態で重心とL字金具の位置関係より、n1=0、n2>0が解を持ち、その時のn2、Nを求めると、

  f:id:taamori1229:20201019155133p:plain

  f:id:taamori1229:20201019155146p:plain


となる。ここでs=0の場合を考えるとそれがガタツキの状態となる。しかし、写真のとおり、今回はL字型金具の位置は台の重心からあえてずらしているのでその心配はない。この金具をもう一ひねりしてLL字型にすれば、金具位置を台の重心と合わせ込むことができたはずである。デザイン上もそちらが安定感があると思うのだが、あえてこの構造を選んだことは計算の上だとすると実に巧妙である。

さて、次に四隅の鎖の重さの影響を考える。鎖の重さをμとした時の方程式は、

 f:id:taamori1229:20201019155227p:plain
 f:id:taamori1229:20201019155248p:plain

となり、これを解くと、

 f:id:taamori1229:20201019155325p:plain

が得られる。つまり、鎖4本は台の重さがその分だけ増えたと考えればよく、台の安定性には無関係であることが分かる。

次に耐震性を検討する。

  f:id:taamori1229:20201019155359p:plain


x軸方向に撃力を加えた場合の運動方程式は、

 f:id:taamori1229:20210104064754p:plain

となる。L字金具からの応力は台に垂直なのでこの式には現れない。ここで、

 f:id:taamori1229:20201019155454p:plain

が成り立つので、

 f:id:taamori1229:20210104064835p:plain

となる。これは単振動の運動方程式であり、その周期は

 f:id:taamori1229:20201019155601p:plain

で与えられる。s=0の時が最大であり、

 f:id:taamori1229:20201019155624p:plain

となる。これは長さLの単振り子の周期と一致する。

y軸方向については、

   f:id:taamori1229:20201019155653p:plain


四隅の鎖からの引力の大きさには差があるが、運動方程式は結果的に、

 f:id:taamori1229:20210104065153p:plain

とx軸方向と同一の形となり、y軸方向についてもx軸方向と同じ周期をもつ単振動となる。よって、台はxy平面上を円、楕円、もしくは斜めの直線往復運動をすることが分かる。つまり、本机において耐震構造は盤石である。

さて、次にこの机に物を置いたときの安定性について考える。具体的にはラーメンのどんぶりをいろいろな位置に置いたケースで検討する。

   f:id:taamori1229:20201019155828p:plain

この場合の運動方程式は、

 f:id:taamori1229:20201019155901p:plain

 f:id:taamori1229:20201019155919p:plain

となり、n1=0の場合の解は、

 f:id:taamori1229:20201019160040p:plain

となる。ラーメンがL字金具の位置よりも写真で左側にあるときは、r<sが成り立つので、n2>0が保証され安定となる。r>sの場合について不安定となる状態(n2=0)は、

 f:id:taamori1229:20201019160110p:plain

で与えれる。具体的に数値計算してみる。M=20kgと仮定し、sについては、写真からs=0.2l程度であることがを読み取った。この場合の不安定点を与えるラーメンの重さm、位置rをプロットすると、

 f:id:taamori1229:20201019160129p:plain

となる。m=5kg以下ならば不安定点は存在しない。よってラーメンを置くことになんら問題はない。しかし体重40kgの子供が台に乗る場合はr=0.3lというL字金具の近くに不安定点が存在し、ここを通り過ぎるたびに台はガタつくので注意が必要である。しかし、それを除けば台の上のどこでも、どんな重さの物が載っても安定しており、加えて耐震性も有するという優れた構造を有する机であることが分かった。


バイオンの原理

ギターの弦を弾いてポロンと鳴らす。

弦の長さをlとして下図のように弦の座標を定め、弦を弾く位置をx=aとする。

   f:id:taamori1229:20200729072757p:plain
音階を作ったのはピタゴラスだといわれている。

  f:id:taamori1229:20200804073114p:plain


ダ・ビンチのフォースター手稿には彼の手による一弦琴の設計図面が記載されている。そこには「同じ素材と太さの弦の振動は弦の張り具合と長さによって変化する」と解説されている。

ギターにおいては6本の弦の張力はほぼ一定になるようにして弦の太さで音程を変えるようになっている。

弦をはじく場所によって基本的な音は変わらないが、音色は微妙に異なることが分かる。それは倍音の含み方による差である。ここでは弦をはじく位置とそれに対応して生成される倍音の構成について解析を行う。

一般に弦の振動は微小な部分の運動方程式から導き出される。


f:id:taamori1229:20200729072831p:plain

弦の一部Δx部については加速度による力と弦の張力が釣り合うことで、

 f:id:taamori1229:20200729072852p:plain

となる。これにより弦の振動方程式として、

 f:id:taamori1229:20200729072902p:plain

が得られる。これは波動方程式であり、弦の両端が固定されているなどの適当な初期条件によって、その解は、

 f:id:taamori1229:20200729211919p:plain


という複数の振動数成分の和の形で与えらえる。ここで、ω、kは、


 f:id:taamori1229:20200729072927p:plain
 f:id:taamori1229:20200729072937p:plain

である。振動数は基本周波数ωの整数倍であり、Gnが各周波数成分の大きさを表す。これらを音楽の世界では倍音と呼ぶ。実際に弦の振動は、

  f:id:taamori1229:20200729211948p:plain


のような振動の重ね合わせになっている。Gnはそれぞれの倍音の大きさを表す。

さて、ここで弦をはじいたときの振動について考える。弦をはじくのは非常に短時間Δtだけの間だけ働く撃力と考えてよい。

f:id:taamori1229:20200729073022p:plain

 f:id:taamori1229:20200729073034p:plain

とする。弦を弾くポイントがx=aの完全に1点であると仮定すると弦の振動速度はδ関数を用いて、

 f:id:taamori1229:20200729073045p:plain

と表すことができる。これに振動方程式の解を代入すると、

  f:id:taamori1229:20200729212026p:plain

が得られる。sinknωを両辺にかけてxで弦の区間積分することで、

 f:id:taamori1229:20200729073137p:plain

となる。定数を無視して比例関係だけを表すと、

 f:id:taamori1229:20200729073149p:plain

となる。ここで、αは弦をはじく位置を弦全体から正規化して0~1で表したものである。

 f:id:taamori1229:20200729073206p:plain

ここで倍音の大きさには弦を弾く力Iは依存しないことに注意を要する。基本周波数であるn=1については、

 f:id:taamori1229:20200729073219p:plain

となり、α=1/2、つまり弦のちょうど中央部をはじいたときに最大の振幅が得られる。この場合の倍音の構成をグラフに表したのが下図である。

 f:id:taamori1229:20200729073231p:plain

この場合の基本周波数の振幅を100とした。基本周波数をド(C)とした場合の倍音の音階を記載している。後ろの数字はオクターブを示している。例えばド(C)の音の3倍音は1オクターブ上のソ(G)の音である。

本図に示すようにα=1/2の場合は、基本周波数の偶数倍の倍音は登場しない。これは、弦の中央部がこれらの倍音の「節」に該当するためである。初期条件としてこの部分が弾かれることによりこれらの倍音の存在条件が除外される。

続いてαの値を変えてみる。

 f:id:taamori1229:20200729073245p:plain
基本周波数の振幅が80程度まで落ちる。同じ理由で基本周波数の3の倍数の倍音が登場しない。

 f:id:taamori1229:20200729073256p:plain

実際のギターでは開放弦に対してにこのあたりをはじくことになる。基本周波数成分はさらに低くなるが、基本音の振幅もまだ70で十分大きいうえに、2倍音(つまり、1オクターブ上)がほどよい大きさになり、音に広がりが生まれる。ギターの形状はこういう設計なのである。

さらにαを値を大きくしてみる。

 f:id:taamori1229:20200729073309p:plain
 
f:id:taamori1229:20200729073322p:plain


以上はギターの例で示したがピアノも弦楽器であり、弦を弾くのがハンマーである点は異なるが原理は同じである。ピアノの場合、ハンマー位置は最後のα=9/10のあたりで設計されていて他の楽器よりもたくさんの倍音が聞こえるのはそのためである。

ギターの場合はこの倍音の影響で音は
やや無機質でひずんだように響く。これを効果的に使っているのがビートルズの「Revolution 1」のアコギの間奏である。ジョン・レノンはブリッジすぐそばで約2倍の強さでピッキングすることで全体として単調なギターのフレーズに絶妙なアクセントを加えている。

バイオリンの場合については、
弦を弾かずに擦り合わせることで音を出すので事情は異なる。弦は弦でも撥弦楽器擦弦楽器の差である。

ピアノにおいては音の大きさによって倍音の含み方が異なるという報告がある。上記の解析では撃力の大きさによって倍音の構成は変わらないという結論である。この違いの原因としては弦楽器固有の共鳴メカニズムの影響、また弦を弾く位置が1点であるという仮定が撃力の大きさに応じて崩れてくることなどの要因が考えられる。

神田川数列(最終回)

問題をあらためてここに整理する。

 f:id:taamori1229:20200521172226p:plain

mxnの格子に対して、1x2の畳を敷き詰める。畳は縦長、横長のいずれでも構わない。敷き詰めるすべての方法の数を求めることである。当然、m、nの両方が奇数の場合は、必ず1つあまりが出てしまうので、0となる。

全体を俯瞰していい方法が見当たらなかったので、地道ではあるがmの値を1から順に計算していって全体の流れから一般式を見い出す作戦とした。


まずm=1の場合、畳は横長に並べてるしかない。nが奇数の場合は、余りがでてしまうので0である。nが偶数の場合だけ1となる。これを漸化式として表現すると、

 f:id:taamori1229:20200521173324p:plain

となる。nが2つ飛びであることに注意を要する。

次にm=2の場合は、畳は縦に一つ置く、横に2つ並べて置く、の2通りを順次繰り返していくことになる。これは有名なフィボナッチ数列であり漸化式は、

 f:id:taamori1229:20200521173917p:plain

である。続いてm=3の場合である。これについては前回までに示したように、縦横の組み合わせパターンに分類してパターンごとの漸化式を作成しそれらを統合してくことで求められる。

 f:id:taamori1229:20200521174435p:plain

ここでもm=1の場合で見られたように、2つ飛びの漸化式となる。これがmが奇数の場合の特徴である。nが奇数の項ではとびとびに0となる。

続いてm=4の場合、これもさらに複雑な計算の結果、

 f:id:taamori1229:20200521174732p:plain

が得られた。mが偶数なので隣接の漸化式である。n-4の項まで登場した。

さらにm=5。苦しい計算の結果、

 f:id:taamori1229:20200521175050p:plain

となった。mが奇数なので2つ飛びである。

m=6の場合についても非常に煩雑な計算の末に、

 f:id:taamori1229:20200521175338p:plain

体力的にはここまでが限界である。

以上の結果を数表の形で示すと下表のようになる。

 f:id:taamori1229:20200521181403p:plain

m、nについては交換しても数字が変わらないことを利用してm=7,8もある程度は記入することができる。

4x4が36通りというのはなんとなくわかるが、6x6になると6千通りを超えるという事実がどうにも信じられない。8x8の場合は求められていないが100万通りをはるかに超える。この表を見ていても数字の規則を見つけられそうにない。そこで漸化式の形に着目して規則を見出すことにした。漸化式を=0の形で表現して登場する係数を並べたものが下表である。(m=7、8は類推)

f:id:taamori1229:20200521182211p:plain

漸化式の中心の項を縦方向に並べてみる。

f:id:taamori1229:20200521182810p:plain

これで見えてくるのは、

 (1) 漸化式の項数はmの増加に従って、指数関数的に増加する。
 (2) 漸化式の係数は中央の項からみて前後に対称である。
 (3) 特に最初と最後の項の係数は1かー1である。

本表をもう少し見通しをよくするために上記の隣接項表記から、つまり2つ飛び表記したらどうかを検討した。

一般に隣接する項による漸化式は所定の手続きで2項飛びの表記に変換が可能である。

その原理をm=2の場合(フィボナッチ数列)を例に示す。

 f:id:taamori1229:20200521195008p:plain

このように元の漸化式を項をずらしたものに所定の値を掛けたものを複数足し合わせることで、2つ飛びの漸化式に変換可能である。これを用いて上の表を書き直したものを下表に示す。

f:id:taamori1229:20200521194634p:plain

こうして漸化式の進化の規則についてその概要を明らかにすることができた。しかし、本表に登場する数字の規則性についてはまだまだ藪の中である。m=7以上で漸化式を求めることは非常に困難であるためこの手法の解析はここまでとして、今後、全く異なるアプローチの登場を待つしかない

神田川数列(その3)

性懲りもなく前回の続きである。縦方向を3から4にしてみたらどうなるだろうか。題意からは大きく外れるが。2列の基本形における敷き詰め方は、


 f:id:taamori1229:20200505091555p:plain
この5通りである。次に横4列(=8畳)の場合はどうなるか。

 f:id:taamori1229:20200505091623p:plain
すべてが横長、すべてが縦長の場合はそれぞれ1通りずつと単純明快なのだが縦横が入り乱れると途端に複雑さを増す。数えてみると36通りである。

さてこれを2n列並べた一般的な場合を考える。

 f:id:taamori1229:20200505091729p:plain
4n枚の畳の敷き詰め方をnの一般式として表すのが目的である。

前回同様の漸化式のアプローチをとる。右端に着目すると次の6パターンが存在する。

 f:id:taamori1229:20200505093202p:plain

 f:id:taamori1229:20200505093230p:plain

 f:id:taamori1229:20200505093245p:plain

 f:id:taamori1229:20200505093309p:plain

 f:id:taamori1229:20200505093324p:plain

 f:id:taamori1229:20200505093341p:plain 

それぞれの系列をK、Y、S、T、U、Wという6つの系列で表す。今回求めたいのはこの中のK系列である。図において、×をつけたのは複数のパターンが存在することを示していてその数を系列の係数として表現している。ここまでの考察で、次の漸化式が得られる。

 f:id:taamori1229:20200505094002p:plain

K以外の系列について次の敷き詰め方を注意深く見ていくと、次の漸化式が成り立つことが分かる。

 f:id:taamori1229:20200505094132p:plain

非常に煩雑なので、次の規則を適用する。対称性から明らかに、

 f:id:taamori1229:20200505094330p:plain
が成り立つのでTを消去して整理すると、次の漸化式群が得られる。

 f:id:taamori1229:20200505094421p:plain

あとは根気強くこれらを解いてKだけの漸化式を求める。その結果、

 f:id:taamori1229:20200505094819p:plain

が得られる。この漸化式の特性方程式を解くと、

 f:id:taamori1229:20200505094909p:plain
Kの一般項はこれらのべき乗の線形結合となる。適当な初期条件でこれを解くと、

 f:id:taamori1229:20200505095010p:plain
が得られる。

非常に面倒な計算式なので前回同様に、

 f:id:taamori1229:20200505095157p:plain

解を展開したときに現れる係数a、bを用いることとすると、

 f:id:taamori1229:20200505095241p:plain
という簡単な式が得られる。これによって数列は、次のように求められる。

 f:id:taamori1229:20200505095323p:plain

急速に増大していく。数え上げようと思わない方がいい。

次はさらに縦方向を4を5、6と増やしていきたいところだが手計算で行えるのはここまでが限界で、もっと賢いやり方を考えないとこれ以上は無理である。


最終的に求めたいのは、縦方向、横方向の2次元で一般化したK(n,m)である。ここまでで得られた範囲で書き出してみると下記となる。ここで、畳がきちんと収まらないものは除外している。当然のことだが、n、mについては交換しても値は同一になる。また、2行目、2列目にはおなじみのフィボナッチ数列が登場する。

  f:id:taamori1229:20200507075507p:plain

現時点ではこれを眺めてみても何も見えてこない


神田川数列(その2)

前回に引き続き3n畳間を畳で敷き詰める場合の数の話である。
 
 f:id:taamori1229:20200501073938p:plain

nに対応した場合の数を

 f:id:taamori1229:20200429142409p:plain

としてその数列の一杯式を求める。

全体を俯瞰しても答えが見つかりそうもないので、端からかいつまんで考えてみる。

まずは、最後にきれいに2列分空いている場合である。

 
f:id:taamori1229:20200501074712p:plain

この場合は、最後の3畳分は、次の3通りが存在し、残りの部分の組み合わせは、n-1に対応したものに等しく、最後の部分には次の3通りが存在する。

 f:id:taamori1229:20200429142052p:plain

残りの部分の組み合わせは、n-1に対応したものに等しく、最後の部分には次の3通りが存在する。

次に最後がこのようにきれいな2列にならない場合は、次の2つのパターンがあり、それらはKでは表現できないのでそれぞれU、Lと呼ぶ。

 f:id:taamori1229:20200501075111p:plain

以上より、次の漸化式が成立する。

 f:id:taamori1229:20200501075602p:plain

U、Lについては対称性から、

 f:id:taamori1229:20200501075747p:plain

となることは容易に想像がつくので、

 f:id:taamori1229:20200501075827p:plain

となる。次にUを考える。また端の部分に着目すると下記となる。

 f:id:taamori1229:20200501080024p:plain

よって、

 f:id:taamori1229:20200501080202p:plain

以上より、神田川数列は次の連立漸化式に従う。

 f:id:taamori1229:20200501080433p:plain

これらよりUを消去すると、

 f:id:taamori1229:20200501080521p:plain

が得られる。この解法はテクニカルになるのであまり説明はしないが、次の2次方程式、

 f:id:taamori1229:20200501080713p:plain

そしてその解、

 f:id:taamori1229:20200501080758p:plain
のそれぞれのn乗の線形結合で求められることが分かっている。初期値を使って、

f:id:taamori1229:20200501081002p:plain

となる。この第2項は小さいことから(<0.1)第1項のみの四捨五入で、

 f:id:taamori1229:20200501081058p:plain

となる。

この数列には次の不思議な特徴があることが考察の過程で分かった。

 f:id:taamori1229:20200501081500p:plain
と表すと、

 f:id:taamori1229:20200501081534p:plain

となることも容易に示される。これらを用いてKを計算すると次のシンプルな式が得られる。

 f:id:taamori1229:20200501081625p:plain

これは次のような手順でK数列を求めることができることを示している。

 f:id:taamori1229:20200501081728p:plain
この計算手順が、畳を敷き詰めるという行為とどういう関係にあるのかは定かでない。

もう一つの特徴である。数列Kを実際に書き並べてみると、

 f:id:taamori1229:20200501081940p:plain

である。何か気が付くことはないか。

すべて奇数であること。そして下一桁に現れる数字がのが1か3であること。

それだけではない。

 f:id:taamori1229:20200501082056p:plain

このように3の周期をもっているように見える。n=30まで確かめたが正しいかった。この予想が正しいとすれば、畳を敷き詰める問題が10進法表記上のルールを持つことになり、非常に興味深い。

 

神田川数列(その1)

かぐや姫の名曲「神田川

 ~窓の下には神田川~♪、3畳一間の小さな下宿~♪

あと数年もすれば、この曲が発表されてから半世紀になろうとしている。はたして3畳一間というアパートはまだ存在するのだろうか。若い二人は狭い部屋から始めても構わない。焦らずゆっくりと2倍、3倍、つまり6畳、9畳と増やしていけばいいのである。

畳3枚を使って3畳一間を敷き詰める方法を考えると、

  f:id:taamori1229:20200429142019p:plain

次の3通りしかない。

   f:id:taamori1229:20200429142052p:plain

回転すると同じになるものもここでは別と考える。次は通常4畳半ではあるが、この「半」が中途半端なので2倍の6畳を考える。

 f:id:taamori1229:20200429142125p:plain
畳の敷き詰め方についてであるがまずは先述の3畳が二つ並んだものと考えると、

  f:id:taamori1229:20200429142207p:plain


なり、それぞれが3畳の場合で示したように3通りがあるので、3x3の9通りである。そうでない場合については次の2通りが存在する。

  f:id:taamori1229:20200429142249p:plain

以上より、6畳の場合については合計で11通り存在する。次に9畳の場合を数え上げ始めたがどうも40通りを超えそうである。それ以上にきちんと数え上げられているか心配になる。ということで一般化を試みる。

問題を3n畳の場合で考える。


 f:id:taamori1229:20200429142328p:plain

3n畳の場合の畳の敷き詰め方の数列(神田川数列)を、

 f:id:taamori1229:20200429142409p:plain

としたときの一般式を求める、という問題である。