ー寝る前に服はちゃんとたたみなさい!
ー起きたら布団はちゃんとたたむこと!
幼いころからいくどとなく聞かされました。我々の生活はこの「折りたたむ」という作業から逃れることはできないようです。

たたむという行動は全体の大きさを小さくする効果があります。しかし、たためばいいというものでもありません。ちゃんとたたまないと怒られることがあります。それはきれいに小さくならないからなのでしょう。しかしこの「ちゃんと」という言葉は少しあいまいだと思います。
そこで大人になった今、あらためて折りたたむたたむ際の「ちゃんと」に込められた意味をもう少し分析してみたいと思います。少しは大人らしく。
まず、折りたたむということを図形で考えてみます。

折りたたむと上下で重なる部分が必ず登場します。上の図でグレーに塗った部分です。全体の面積を考えるとその重なった面積だけ減ることになるので、
定理1:折りたたむと全体の面積は減る
という定理が成り立つように思えます。
そして折りたたむと折り目に直線が登場します(図の青い線)。そして一部の曲線は重なって見えなくなります(赤い線)。青い線と赤い線を比べると両端は同じ点です。図形の全体の外周の長さは、この折りたたみによって、赤い線が消えて、青い線が追加されることになります。一方で赤と青の二つの長さを考えてみれば、当然直線である青い線が短いはずです。これによって、
定理2:折りたたむと全体の外周の長さは短くなる
これも正しそうに思えます。これらより折りたたむことを繰り返すと、全体の面積、全体の外周もどんどん小さくなっていくことになります。それはどんなたたみ方をしようとも、です。つまり、折りたたむということは良いことずくめのようにも思えますね。果たして本当にそうでしょうか?
次のようなケースを考えてみます。A4のトレイにA4用紙が入っています。A4用紙を折りたたんでまたトレイにいれます。きちんと周囲と平行を保って折りたためば、

きちんと元のトレイに収容されます。面積も外周も小さくなるのだから当たり前だと思ってしまいます。では、斜めに折りたたんでみるとどうなるでしょうか。

このようにA4トレイに入らなくなってしまいます。この場合でも、全体の面積は減っているし、全体の外周も短くなっているにも関わらず、です。上の二つの例では斜めで折った方がはるかに全体の面積も外周も小さくなっているのに。ちゃんとたたんでいないと叱られるのもこのあたりに原因があるような気がします。
しかし、まっすぐたたむことと斜めにたたむことの差は何なのでしょうか。しかし、斜めそのものが悪いわけではないこともすぐに分かります。

このように、斜めに折りたたんだ場合でもしっかりと元のさやに納まるケースもたくさんあります。
面積と外周だけで単純に「小さくなった」と判断できないということです。これに形に関する判断要素を追加して、折り方についても評価する必要があるということになります。
そこで小さくなったことを最もわかりやすく表現する指標を定義します。
定義:図形上の二つの点を直線で結び、その距離が最も遠くなる直線を直径線、そしてその長さを直径と定義する。

この直径という呼び名は円の場合を拡張したものです。

円の場合は中心を通る線はすべて直径線となり、無限に存在します。但し直径はすべて共通でいわゆる円の直径になります。
このように図形において直径線は一つとは限らず複数、もしくは円のように無限に存在することがあります。他の代表的な図形でみてみましょう。まずは三角形グループです。

三角形においては最も長い辺が直径線となります。正三角形においては3辺ともに直径線です。二等辺三角形では、直径線が2本の場合と1本の場合があります。
楕円についてはいわゆる長軸が直径線となります。

続いて四角形グループです。

正方形、長方形の直径線はいわゆる対角線であり2本あります。ひし形、平行四辺形は長い方の対角線1本だけです。
以上、代表的な図形の直径線についてみてきましたが、折りたたんだ時に直径が小さくなるようにするには折りたたみ方がこの直径線とどういう関係にあるか、がポイントになります。次の定理が成り立ちます。
定理:折りたたみ線がすべての直径線と交差する場合、折りたたみ後の直径は小さくなる。ここで折りたたみ線と直径線が重なる場合は交差とみなさない。
ここでは折りたたみによって直径が小さくなることを単純に「小さくなる」と表現します。以下も同様です。
この定理を長方形の場合で説明します。

長方形の場合は直径線が2本ありますので折りたたんで小さくするには2本と交差するような折りたたみ方をする必要があります。1本だけと交差しても小さくなりません。また、完全に重なった場合や、端の点だけで接する場合も小さくなりません。
円の場合で折りたたみ方を考えてみます。

円は無限の直径線を持つのですべての直径線と交差する折りたたみ線は存在しません。それは、折りたたみ線が円の中心を通る場合でも必ずそれに完全に重なる直径線があるのでやはり小さくなりません。
しかし完全な円ではない場合はすべての直径線と交差する折りたたみ線があり、その場合は小さくすることができます。

正三角形については3本の直径線をすべて通る折りたたみ線が存在しないので
折りたたんで小さくすることはできません。

同様にして正n角形を考えてみると、

正5角形は小さくできませんが、正6角形は小さくできます。以上よりなんとなく次のような仮説が成り立つような気がします。
仮説:正偶数角形は折りたたんで小さくできる。正奇数角形は折りたたんで小さくできない。
さらに次も予想の域を出ませんが、
仮説:正n角形でないn角形は折りたたみで小さくできる。
直線は2角形であると無理やり考えてみると上記の仮説に従って小さく折りたたむことができます。

以上、代表的な図形における直径線と折りたたんで小さくすることができる折りたたみ線の関係を説明しました。次にもっとも小さくできる折りたたみ方とはどういうものか、について考えてみたいと思います。
そのために最も単純な直線、すなわち2角形の場合で考えてみます。

直径Lの直線を端からxの距離の点で角度θまで折りたたむと三角形に変形することができます。できた三角形の直径Dについてはいわゆる余弦定理より、

という面倒な式が成り立ちます。これをグラフとして表すと下記のようになります。

結論だけ言うと、x=L/2、つまりちょうど真ん中の位置でθ=180°、完全に折り返すように折りたたむと最も小さい半分の大きさになります。これは直観と一致します。一般の図形でも成立するかどうかは予断を許しませんがやはりなんとなく、次の仮説が成り立つような気がします。
仮説:直径線が一本だけの場合もっとも小さくするたたみ方は、直径の中点で直径を折り返すようにする方法である。
では、次に長方形のように直径線が2本ある場合にはどうなるかを考えます。

2本の直径線を半分に折ることは可能ですが、2本ともに折り返すことはどんな折りたたみ方をしても不可能です。上記の❶❷のどちらを選ぶのが有利でしょうか、という問題になります。布団を二つたたみするときを考えると我々は当然のように❶を選びます。どうしてなのでしょうか。
直径線が2本ある場合は、まず2本の直径線をベクトルとして扱い、その平均値を考えます。方向は2通りあるので長方形の場合は、それらの組み合わせで次の2つが考えられます。他にも2通りありますがちょうど2つのベクトルを反転させた場合であり、ベクトルの大きさ自体は変わらないので省略します。

あきらかに❶の場合の方が平均ベクトルが大きくなるので❶の方法で折ることが有利である、ということが予想されます。上図に参考まで折りたたんだ後の直径を緑の点線で示していますががあきらかに❶の方が小さくなります。我々はこれを直感的にあるいは経験的に理解しているということです。このことより次の仮説を提示します。
仮説:直径線が複数ある場合には直径線をベクトルとして扱った場合に大きさが最大となる平均ベクトルを求め、それに対して前仮説の通りに折りたためば最も小さくなる。
これが一般的な直径線と折りたたみ方法の関係性の法則となることが予想されます。
参考まで本法則が正しいとすると直径線が無限本ある場合でも適用することができます。その例として切り欠きの円の場合を考えます。

完全な円の場合は、直径線をベクトル化する方法は想像もつきませんが、切り欠きが存在することで回転対称性が崩れて無限数ある直径をベクトル化するルールを作ることが可能となります。具体的には、上図において全ての直径をすべて右向きの方向を選択してみます。

すると合計のベクトルの平均値は積分という方法を使って、中心を通って右向きの直径ベクトルになり、これに対する有利な折りたたみ方法を選択することができます。
以上、まだ仮説の部分も含めて図形の折りたたみとはなんなのか、について解説しました。まだ代表的な図形だけでの議論となっていますが今後は一般図形を想定して証明を進めてみたいと思います。