長さLのゴムがあります。一方は地面に固定されておりそこにアリがいます。ゴムの反対側の端には角砂糖が置かれています。アリは角砂糖を目指して一定の速度v0で歩いていきます。角砂糖の方には意地悪なキリギリスがいてゴムを角砂糖ごと速度vで引っ張って邪魔をします。アリはゴムが伸びたとしてもゴムに対して一定の速度V0で角砂糖を目指して進んでいきます。このゴムは無限に伸びるものとします。
キリギリスが邪魔をしないとき、つまりv=0ならばアリはT=L/v0の時間で角砂糖に到達します。vが0でなくても小さければアリは角砂糖に到達可能だと思われます。しかし、vが大きくなって例えばv0の100倍とかで引っ張られたらアリから角砂糖はみるみる遠ざかり、結果的にありつけないような気がします。
ということはアリが角砂糖にありつけるためのぎりぎりの速度Vが存在するような気がします。そのVはいくつになるのか興味深いところです。
ゴムが伸びた状態でアリがv0の速度で歩くとき、実質的な速度は低下します。これがなかなか角砂糖に近づけない原因になります。この分析のために次の実効的な速度を導入します。
この速度でゴムの長さLを走破できればいいことになります。走破する時間をTとすると、
が成り立つということです。これらより、
これを解くと、
が得られます。簡単のために、L=1m、v0=1m/sとすると、
となります。まず、v=1m/s、つまり角砂糖がアリと同じ速度で遠ざかる場合は、
と1.7秒でありつけます。では、v=10m/sならば、
約37分です。さらにv=30m/sならば、
このように時間はかかりますが、最終的にアリは角砂糖に到達可能です。つまりキリギリスがどんなに早く角砂糖を動かしたとしてもアリは到達できてしまいます。一見、不思議な感じがしますが、ゴムを引っ張ることでアリもまとめて動かしてしまうことにその理由があります。
以上は角砂糖が等速度で動く場合ですが加速、減速する場合はどうなるでしょうか。その解析のために次のパラメーターαを用いた実効速度を導入します。
α=1が最初の問題である等速運動の場合に対応します。これを使うと方程式は、
となります。この形で解くことは難しいのでvが大きいという条件から、1/vの項を無視できるとすると、
が得られ、これをα≠1の条件で解くと、
となります。時間Tが解を持つのは右辺が正の場合なので、アリが角砂糖にたどり着く条件は、
となります。最初のα=1も加えることで整理すると、角砂糖の実効速度が
の形であるとき、アリが角砂糖に到達する条件は、
であることが分かりました。この議論、何かに似ています。それは整数の世界での無限級数、
が、α≦1で発散するという事実です。すなわち「発散する=どこまでも行ける」ということです。