★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

書評

ゴシック洞窟

『ゴシック全書』ゴシックという難題を映像という切り口からその全貌を明らかにしようという無謀な試みをまず純粋に評価したいと思います。 さて感想は?ということですが、これを読むというか、眺めていて私の頭の中にはゴシックという洞窟に潜むありとあら…

昭和は遠くなりにけり

「降る雪や明治は遠くなりにけり」俳人中村草田男がこの句を詠んだのは、明治から大正を過ぎた昭和の初頭、昭和6年のことでした。今、令和の初頭にあってちょうど昭和を振り返る時期に相当しています。先日、神田神保町の古本屋街を歩いていてなんだか懐か…

2023年SFの旅

あけましておめでとうございます。2023年、この数字を心を空にしてあらためて眺めてみると、 その未来感に圧倒されました。今年は年末年始はとりたててすることもなかったのでJ・P・ホーガンのSF小説『未来の二つの顔』を読み直しました。 学生時代からなの…

見えざる敵(ボッカチオ『デカメロン』)

現在、世界中が見えない敵と戦っている。感染防止の外出禁止、自粛のムードの中で読み忘れたまま本箱に放置されていた本を再び手に取る機会も増えてきているのではないだろうか。 100の物語からなる大著『デカメロン』。14世紀ルネッサンスの時代、イタ…

コリオリゴルフ(Coriolis' Golf)

J・P・ホーガンのSFの名作「未来の二つの顔」はスペースコロニーを舞台とした壮大な実験の物語である。 www.tsogen.co.jp その実験とは人工知能を持ったコンピュータは人類と共存できるのか、はたまた破滅へと導くのかというテーマである。場所はヤスヌと呼…

まるちゃんとおでん屋

そのニュースを聞いたとき、仕事で静岡県の清水を訪れたときのことを思い出した。清水は次郎長で有名な港町だが、てっきり清水市というのだとばかり思っていたのだが静岡市に合併されてその一部の清水区になっていた。JR清水駅の改札を抜けるとすぐそこにこ…

ダークサイド・ショート・ストーリーズ(DS3)

人間の感情の中で何よりも古く、何よりも強烈なのは恐怖である(H・P・ラブクラフト)人はみんなできるだけ不安になるべきだと思うんですよ。世界というのは不安なものだから(エドワード・ゴーリー) 殺人事件、怪奇、恐怖、幻想、不安・・・これら負のイメ…

会津に怪獣出現!

近所の図書館で江戸時代の新聞・かわら版の図版集を発見し、時間のある時に立ち寄ってパラパラとめくっている。火事や地震などの真面目な記事も多いのだが、心中事件などの色恋沙汰、かたき討ちの美談、また時には真偽が疑わしい怪事件なども結構散見される…

『ドクター・スリープ』(スティーヴン・キング)

本作品はスティーブン・キングの「シャイニング」の続編である。前作が1977年だったのですでにすでに40年近くが経過したことになる。「シャイニング」はキューブリック監督の映画でも有名となった。ゴシックホラーの形式を巧妙に取り込みながら、モダンホラ…

『賢者の贈り物』(オー・ヘンリー)

オー・ヘンリー(O. Henry)の『賢者の贈り物』の冒頭はこういう書き出しである。 1ドル87セント。それだけだ。しかもそのうち60セントは1セント銅貨である。デラはそれを3度数えなおした。明日はクリスマスだというのに。 『賢者の贈り物』はつつましやかに…

オールド・チェシャ―・チーズ(Ye Olde Cheshire Cheeze)

シャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)シリーズの傑作『赤毛組合(The Red-Headed League)』にはこんな記述がある。 そこからちょっと歩いたところが、サックス・コーバーグ・スクエア、朝方聞かされた奇怪な事件の現場である。狭く苦しくちっぽけな、落…

『アストロ球団』

いつか読もうと思っていた『アストロ球団』であったが、最近、インフルエンザで隔離生活を送ることになったので、その退屈にまかせて一気読みした。 この作品は当時、少年ジャンプに連載された3000ページを超える野球漫画の超大作である。ちょうど「巨人…

カキモリ文具店

さてなんだかわからない人も多いと思うが知る人ぞ知る文具屋さんである。創業は2010年なので老舗というわけではない。まずはホームページをご覧になってほしい。 たのしく書く人。カキモリ 万年筆とノートが好き、そして書くことが大好き、そんな素直な気持…

川崎のぼる~汗と涙と笑いと~展

三鷹市美術ギャラリーに行ってきた。このギャラリーはJR三鷹駅南口すぐのビルの最上階にあり至近。こじんまりとしたギャラリーで入場料も600円とお手頃。 川崎のぼるは『巨人の星』執筆当時の'67頃、三鷹に住んでいたとのことである。『巨人の星』については…

『ソラリス』(スタニスワフ・レム)

ハヤカワ文庫のSFが今年の4月で通巻2,000番目を迎えた。記念すべき2,000番目はポーランドの巨匠レムの『ソラリス』である。 すでに『ソラリスの陽のもとに』というタイトルで1977年に237番として出版されていた。私も高校生時代にそれを読んだ。今回は新訳…

『緋色の記憶』(トマス・H・クック)

トマス・H・クックの『夜の記憶』を友人から薦められてアマゾンで注文した。届いたのが実はこの『緋色の記憶』であった。裏表紙の紹介文を読んでみると友人の薦めた理由ともさほど変わっていないことに気がついたので、まあこれでもいいか、とそのまま読んで…

『その女アレックス』

数々のミステリー大賞を総なめにした2014年の文句なしの最高傑作ミステリー。 Amazon.co.jp: その女アレックス (文春文庫): ピエール ルメートル, 橘 明美: 本 一見ありがちなイントロから始まり、あらゆる予想、期待を裏切る結末とこれまで味わったことの…

『アンダー・ザ・ドーム』(スティーブン・キング)

キングの久しぶりの大作『アンダー・ザ・ドーム』(文春文庫、1~4)。 メイン州の片田舎の小さな町がある日、突然謎のドームにすっぽりと包まれる。基本的にシチュエーションはそれだけ。あとは、そうすると何が起きるか、何がどうなるか、想像力だけの世…

『酒とつまみ』

『ふりむくな、うしろに酒はない』というキャッチフレーズがイカした、酒場と酒とつまみだけが話題の雑誌。4年前に創刊した季刊誌である。約80ページで定価400円。 今回で特集『山手線一周ガード下酩酊マラソン』が最終回を迎えた。他にはガロ系の下品な漫…

れんまん!

先手・楳図かずお、後手・日野日出志。当代きっての怪奇漫画家二人が順番で漫画を一コマずつ書いていく。相手の意表をついた展開をした方が勝ち、というなんともアナログなルール。 なかなか緊迫した展開。 そして気になる勝敗は・・・ 楳図かずおの貫録勝ち…

『肉体の悪魔』(ラディゲ)

ー恋愛に生命を見出した者たちにとって、一緒に生きることと一緒に死ぬことに大きな相違があろうか? Amazon.co.jp: 肉体の悪魔 (新潮文庫): ラディゲ, 新庄 嘉章: 本 Amazon.co.jp: 肉体の悪魔 (新潮文庫): ラディゲ, 新庄 嘉章: 本

トータル・リコール

映画『ブレード・ランナー』の原作『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の原作者フィリップ・K・ディックの傑作短編集。 タイトル作品『トータル・リコール』は映画化されたので有名(2回、リメイク版は2013年)。さらには2008年にスピルバーグが映画化…

和算の歴史

江戸時代に誕生した和算。いつも紹介で登場するのはこの本の扉絵のような、円を中心とした複雑な図形の中で半径を求めるような計算ばかり。しかも日本語特有のタテ書きと漢字。 時はまさにGauss, Eulerと同時代。それと比べてどこまでの水準に到達していたの…

『墨東綺譚(永井荷風)』に見る昭和初期の向島界隈の風景

「向島寺島町に在る遊里の見聞記をつくって、わたくしは之を墨東綺譚と命名した。」 荷風の代表作はこんな一節ではじまる。この作品は昭和12年に大阪朝日新聞の夕刊に連載され、夕刊が売り切れるほど大好評を博したらしい。昭和12年と言えば時局柄、太平…

『ペール・ギュント』

小中学校で朝の登校時『朝』という曲を流れているのを聞いたことがある人も多いと思う。それはグリーグの作曲による『ペール・ギュント組曲』の第一曲である。この本はその原作となったイプセンの戯曲である。 組曲の方は『朝』『オーセの死』『アニトラの踊…

『トウモロコシ畑の子供たち』

広大な大地に果てしなく広がるトウモロコシ畑。 アメリカの原風景ともいえるここを舞台にスティーブン・キングの傑作短編『トウモロコシ畑の子供たち』は書かれた。 とある旅行者夫婦がそのトウモロコシ畑の中にの街に迷い込む。そこには「18才以上は生き…

定本・室生犀星詩集

書棚の中で最も古い本。 学生時代に近所の古本屋で見つけた。タイトルは犀星の直筆。当時、3,500円。それでも決死の覚悟で食事を切り詰めてなんとか手に入れた。 発売当時、定価3円。犀星の印が押されている。印刷は昭和16年(1941年)12月15日だから太平洋…

ハカセ君のその後

オバケのQ太郎のハカセはめでたく最優秀ハカセ大賞を受賞した。 taamori1229.hatenablog.com 実はオバケのQ太郎には正太、よっちゃんそして他の友達が成人したあと(推定では20年後)の後日談がある。題して『劇画・オバQ』。 これが成人後の正太とハカセ…

夜間飛行

「人間の生命に比べて、より永続する救うべき何物かが存在するのかもしれない。ひょっとすると人間のこの部分を救うためにリヴィエールは働いているのかもしれない。」「部下の者を愛したまえ。ただし、彼らにそれと知られず愛したまえ。」

未来の二つの顔

未来を舞台にした映画・アニメ・小説の設定年代のチャートを作ってみました。 すでに鉄腕アトムの誕生した年を過ぎ、今年2015はエヴァの年。まもなく、ブレードランナー、AKIRAの時代を迎えようとしています。(AKIRAの作品の中で『来年は東京オリンピックだ…