★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

1980-01-01から1年間の記事一覧

故郷にはぐれても

故郷でもないのに銀杏やけやきの巨木があればその場所がわたしを抱きしめる季節の匂いが胸を刺し遠い日が足元から吹き上げてくる夢の他に何もなかった日々心の傷より転んだ膝小僧が痛かった日々校庭の巨木によじのぼった日々そして父も母も生きていた日々私…

希望

真新しい希望だけを枯葉の匂いに包んでこの秋を生きていたい たそがれにはまだ遠い北多摩の野に幸せは風のように漂うのにひと時の歓声はとんぼを追う子供のように邪気もなく美しくやがて消える 史跡は優しく沈黙し心は雲のようにあたたかい真新しい希望とは…

水の故郷

あの水たちに故郷があるならばそれはどんな風景だろう水の母が水の子を作り水の子達が水の村を作るそれはどんな風景だろう 水の故郷にはいつも風があるだろう水と風は仲間になり朝霧と夕暮れが訪れ樹々の梢の先からは雲までが友達の顔をする 水の故郷とは水…

陽だまり

恋人たちは振り向かない公園のその先には賑わう街があるのだから誰も気がつかない陽だまりにさむざむと立ち尽くしていた娘に 親子連れは仲良しで笑いこぼして歩いていく赤い実をくわえた小鳥にさえ誰も気づかない待ちくたびれた娘の涙をくわえて飛び去ったの…

花追い人

花を恋する人がうらやましい花におぼれる人がねたましい芽生えにはしゃぎ落花に涙して優しい目をする花追い人生きていくことは限りない忘却の道のりだ恋した熱を忘れ別れの悲しみを忘れそれらの優しい日々を忘れそれでもまだ死ねないでいる百花の園へ通いつ…

おまつり

一粒の涙が胸をつらぬき惜別の情がぬくもりを呼び覚ます空港のざわめきがなぜか優しいのは無数の小さなぬくもりが幾重にも寄り添うからだ旅立つ人、見送る人旅から帰る人、迎える人孤独な人、陽気な集団この優しいざわめきは人の住む故郷のまつりに似ている…

私は風

四万四千平方メートルの生命感私はこの公園が好きです早朝のもやの中で走る少年に恋したり昼下がりの陽光を受けて散歩する老夫婦に呼びかけたり日暮れには淋しい少女にわざと冷たくしたりするのです私は風四万四千平方メートルの公園をいつもパトロールして…