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サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

柿の実定理

今年の柿は不作だった。

第一の原因は、夏場に雨天が続いて十分な日照時間が確保できなかったことである。さらに追い打ちをかけたのが台風19号である。熟した実が暴風雨を受けて一夜でたくさん振り落とされてしまった。

それでもけなげに耐え抜いてくれたのが彼らである。

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ちょうど20個であった。これを積上げてみると一辺の長さ4の三角錐がきれいに出来上がった。

いきなり数学の話になって恐縮だが、d次元の三角錐を考える。一辺の長さをnとしたときに、三角錐を構成する柿の実の数を、

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と表す。一番わかりやすい2次元の場合(三角形)を考えると、

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柿はこのように積み上げられ、長さnの柿の実の数は、

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で与えられることは有名である。幼少のガウスがこれを発見したという話もある。次に3次元を考えると長さが1~nの三角形を積み上げていくことになる。この操作を一般のd次元に拡張すると、柿の実の数に関する漸化式は、

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となる。3次元の場合でこれを計算すると、

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となる。今回、収穫した20個の柿については、

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と記述される。

4次元以上の場合も同様の漸化式で計算することになるが、その計算は次元数が増えるに従って複雑化してしまう。もっとわかりやすい計算方法はないだろうか。ということで、2次元、3次元の式を並べてみる。

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これらはどこかに見覚えがある。それは分子の掛け算の順序を入れ替えるとわかりやすい。

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これから次の定理が予想される。

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これを数学的帰納法で証明する。

(1) d=1の場合、三角錐を想像するのは難しいが、

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と考えれば、

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であり、確かに成り立つ。

(2) d=k次元で成立すると仮定する。すなわち、

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d=k+1次元について漸化式を用いて計算する。

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つまりk+1次元でも成立する。

以上より、すべてのd次元について成立することが証明された。この過程で、下記の恒等式を使用した。

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この恒等式パスカルの三角形において、斜めに並んだ数の総和がすぐ斜め下に登場するという原理を示している。

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三角錐に関する定理が同じく三角形の原理から導き出されることは決して偶然ではない。

今回の1,2,3次元のnに対応した柿の数の列を書き出してみる。

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これらの数列は、パスカルの三角形の上にきちんと並んでいる。

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今回の柿の数である20もすでにここに登場していた。こうしてみると、パスカルの三角形が柿の個数を数えるために存在していたような気がしてくるから不思議である。