三角形の合同条件は算数の定番メニューである。たいてい次のように決められている。
三角形は3つの辺と3つの角から成り立っている。合計6個の変数があるということである。
これらを対等であると考えるとどうも合同となるためにはこの6個の中から最低でも3つは一致しないといけないように見える。6個から3つを選ぶ方法は20通りある。3つの辺と角はどれかが特別という訳ではないのでこの20通りがすべて別々ではなくいくつかのパターンに分類される。
まず、この20通りについてパターン分けをしてそれぞれが合同となるか否かを調査した。その結果を次に示す。
このように合同パターンは4つ、非合同パターンは2つの合計6パターンに分類された。ここで「③」などは組み合わせの数を示している(これを合計すると20になる)。「非合同」とは勿論合同の場合もあるが、合同でないケースも存在する、という意味である。
非合同パターンの一つは「(1)3組の角が等しい」場合である。これはよく知られた相似のケースに相当する。
これが合同とならない理由は次の式である。
このようにA,Bなど2つが決まるともう一つのCは自然に決定される。角の一致については2つ分の条件にしかならず3つという条件に届かない。
もう一つの非合同パターンである「(2)1組の辺と両端いずれと両端以外の角が等しい」場合である。
これは2通りが存在し、一方は合同であるがもう一方は非合同である。これの理由はよく知られた余弦定理の形に依存する。
この式の中で例えば、2辺(a,c)の長さと角Cが与えられたとき、本定理はbについての2次方程式の形となり2通りの解が存在してしまうのである。
以上示したように、3角形の合同条件については、最低3つが等しいことが必要であり、その3つは独立な3つでなければならない、そして4変数からなる三角形の各種定理において3つを定めた時に4つめが一意に決定される必要がある、ということが条件となりそうである。
さてここまでは算数の範囲を超えていないがこれを数学に格上げしてみる。さらに3つの三角形の変数を追加する。
こうすると全パラメータの数は9個となる。9個から3個を選ぶ組合せの数は84通りである。この84通りはいくつのパターンに分類されるか、そして合同・非合同パターンはいくつずつであろうか。そしてどんな非合同のパターンが得られるだろうか。
結果は下記のように全部で25パターン。合同パターンが21、非合同パターンが4であった。
非合同パターンは2つ追加された。一つは「2組の辺と面積が等しい」場合である。これは下図に示すように2通りが存在する。
これは三角形の面積についての次の定理による。これを満足するθは2つ存在することによる。
そしてもう一つの非合同パターンは「1組の辺と両端でない角と外接円の半径が等しい」場合である。
これは次の公式より、2通りの角が存在する上に円周角の定理(3変数)によって数限りなく存在してしまうという複合的なケースである。
こうして算数から数学に格上げしたことで21個もの合同条件を導くことができた。これらはすべて証明したわけではなく、直感的に判断したものも多い。具体的な活用シーンでは(そんなことがあれば、だが)事前に証明することをお勧めする。
この中から一つだけ証明しておく。パターン21は「面積、内接円の半径、外接円の半径が等しい」場合であるが辺、角が一つも登場していないケースである。やや複雑な計算の結果、三角形の3辺(a,b,c)は、次の3次方程式の解に対応し、その一意性から合同であることが保証される。