3角形の合同には小学生でも気がつくある問題が潜んでいる。
それは反転している場合を合同としていいのか。ひっくり返さないといけないものを合同と言っていいのか、という問題である。
確かに3次元の場合の例で靴などを考えてみると左右反対に履くことはできない。これら2つを完全合同、反転合同と区別してみる。前に挙げた3つの合同条件もいずれも区別できない。無理に区別しようと思うと完全合同条件は次のようになる。
このように3角形の回り方とか、場所を定めて左右というなど大人げない表現を使わざるを得ない。 前回、21の新しい合同条件を提案したがそこにおいてもこれらすべてにおいてこの二つを区別できていない。
そこで合同と判断された2つの三角形が完全合同なのか、反転合同なのかを判別する方法を考えた。 そのアイディアは2つの三角形を線で結んでみることである。
対応する点を結んでそれぞれの線の中点をとる。そしてその3つの点の関係を調べてみる。
まず、完全合同の場合である。
2つの三角形は完全合同で角度θだけ角度をずらしている。それぞれの三角形の重心をg、g’とし、そこから3点に向かうベクトルをa,b,c、a’,b’,c’とする。この時の重心の中心Gから中点A,B,Cに向かうベクトルをA,B,Cとして計算すると、
同様にして、
となる。ここでθだけ回転させる行列をR(θ)と表した。
結果が示すように三角形ABCは元の三角形をθ/2だけ回転させてcos(θ/2)の比率で縮小した相似三角形である。特にθ=180°の場合は、A,B,Cは1点になり三角形ではなくなる。また、特徴的なのは3本の結ぶ線の垂直2等分線が一点Xで交わることである。
2つの完全合同三角形はこの点Xを中心とした回転で完全にぴったりと重ねることができる(平行移動は不要)。
次に反転合同の場合である。
パラメータの定義などは完全合同の場合と同じである。二つの三角形の関係としてはまず、任意の単位ベクトルtを考えてtに垂直な方向に反転させ、その後、θだけ回転させることとする。 ベクトルA,B,Cを計算すると、
同様にして、
これより、ベクトルA,B,Cはベクトルtをθ/2だけ傾けたベクトルと垂直な方向であることがわかる。すなわち、点A,B,Cは一直線上にある。 また、この直線を中心に三角形を折り返すとその後、平行移動だけでもう一つの三角形にぴったりと重ねることができる(回転は不要)。 以上より、三角形の完全合同、反転合同に関する定理が得られた。以下に整理する。
これらの定理は三角形に限らずあらゆる図形の合同条件に適用できる。また、物の本では合同の説明に反転、回転、平行移動でぴったり重ねることができると書かれているがそれは厳密ではない。本定理によれば、完全合同の場合は回転だけで、反転合同の場合は反転と平行移動だけでそれぞれぴったりと重ねることができることがわかる。