前回に引き続き、特撮座標系の話である。
今回は同じく重力の影響を受けて塔が倒壊するシーンを撮影する。
スケール比100分の1の模型を使って撮影する。
この場合の回転角θに関する運動方程式は、塔の重心が高さの2分の1の位置にあるとして、塔の慣性モーメントをIとすると、
で与えられる。塔を長さRの棒の形状とみなすと慣性モーメントIは、
であるので、求める運動方程式は、下記となる。
これを解くのは容易でないので、座標系変換でこの運動方程式がどう変換されるかを考える。
これによると変換後の運動方程式は、R'=NRに注意して、
となり、やはり重力gの項が正しくならない。みかけのN倍の重力により現実よりも短時間に倒れてしまう。そこで、次の座標変換系を使う。
この座標系によると、
となり、現実世界と同じ運動が成立する。つまり、スケール100分の1の模型を使った塔の倒壊シーンを撮影する場合においても10分の1のスローモーションで撮影するのが正しいやり方であることがわかる。