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サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

みちのくフィギュアみやげ(続き)

せんべい汁のフィギュア。鍋の直径は2cmほどである。

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7種類のフィギュアをすべて手にいれるまでに必要な回数の期待値を計算する。ここでそれぞれが出てくる確率は1/7で等しいものとする。

r回目めにn個が初めてそろう確率ΔPが求められれば、期待回数Eは次の式で計算できる。

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しかし、ΔPの計算は難しそうなので、r回までにそろう確率Pを求めて、(r-1)回までの確率を差し引くことで計算することとした。

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r回まででr個すべてを含む順列の数をSとすればPは、
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で求められる。Sを具体的に求めると、

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などである。一般的の場合で確率Pを求めると、

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となる。これを使って期待値Eを計算した結果を以下に示す。

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どうにも規則が見つからない。今回の問題のn=7の場合は、
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となる。一般の場合で計算してみる。

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途中の過程は煩雑なので省略するが、結果的に、

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となる。さらに計算を進めると、

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というすっきりとした形に変換できた。途中過程で使った恒等式をメモとして記載しておく。

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後者は、パスカルの3角形の特徴であるが、

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1から始まる斜めのラインで合計した値がすぐ斜め下に登場するというものである。これは3角形内すべての場所で成り立つ。

さて、今回得られた式をn=7の場合で確かめてみると前の複雑な級数計算と同じ結果が簡単に得られた。最初からこの式が得られれば面倒な計算をすることがなかったのだが。

この式の形をじっと眺めてみる。すると、次のアプローチが成立することが分かった。

まず、1回目のトライをする。いずれか1つが手に入る。2回目以降で1回目と違うものが得られる確率は6/7である。一般に確率pの事象が発生するまでの期待回数はpの逆数(1/p)になるので、2個目が手にはいる回数は7/6である。続いて3個目が手に入るまでの回数は7/5、こうして7個目が手に入る回数までの総数を計算すると、

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と計算できるのである。

みちのくフィギュアみやげ

墓参りの旅の道すがら、みちのくの駅売店でこれをみつけた。

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第3弾だそうである。

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1個500円と高価だが、なかなか精巧にできていて気に入っている。

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フィギュアは7種類。左上から、中尊寺金色堂、花笠踊り、三春駒、かまくら三陸鉄道、松島の日の出、そしてせんべい汁

早速購入してみると、せんべい汁だった。

7種類すべてそろえるには何回くらい買わないといけないだろうか。7回だけで全部そろう確率を計算すると4%くらいとほぼ絶望的である。仮に6個までそろえたしても残る1個がでる確率は1/7なのでそこからさらに7回買わないといけない。

計算してみると意外に難問であった。答えは約18回、つまり9,000円必要な計算である。


4次元超立方体の角(その2)


一般に一辺の長さがnのd次元の立方体は、

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で記述される。これを一辺の長さn+1に拡張すると、結果的に

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に拡張される。この拡張により立方体の体積は、

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だけ増加する。この多項式の順番に従って各要素を追加していくことを考える。この過程で追加される座標は、

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で表される。このd個の座標をn+1の登場有無に従って2つのグループに分けて、次のように追加操作を記号で表現する。

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分母の追加位置Pは、要素を追加する位置を示し、
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である。特にd=p、m=0の場合については、

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と記述する。d個の中からp個が選ばれる総数は、
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なので、すべての追加される要素の体積の総和を計算してみると、

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となっている。

以下、1~4次元での拡張の手順を本操作記号を用いて説明する。


■1次元

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この場合は「角」が追加されるだけである。

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■2次元

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1次元の列が二つ、そして角が追加される。

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■3次元

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3つの平面、3つの列、そして最後に角が追加されて完成する。

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■4次元

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問題の4次元である。x、y、zの3軸にw軸が追加される。当然、厳密に表現することは難しいのでn=3の場合のイメージとして示す。まずはスタート地点。ちょっと長くなるが。

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まずは立方体を追加するが、x軸方向に追加する場合はこれ。平面がw軸方向に重なる。y、z軸の場合も同様である。

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w軸方向についてはちょっと異なり、w=4の場所に立方体が出現する。

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これらは違う形に見えるが、4次元の住人からみると等しく立方体である。4つの立方体を追加するとこうなる。

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続いて平面を追加する。まずは(x、y)方向に追加した場合。列がw軸方向に並ぶ。(y、z)方向、(z、x)方向も同様。

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w軸がからむ3つの方向についてはw=4の場所で平面が追加される。下記は(w、x)方向の例。

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6つの平面が追加したものが下記。

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続いて列を追加する。4つまとめて追加したものが下図。こうして残るは一か所のみとなる。

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最後に残った角を追加。

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これにて拡張は完了。以上に示した通り、

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これがすべての次元で最後に登場する「角」の正体である。

4次元超立方体の角(その1)

n個の列に1つを加えてn+1個の列にする。

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これは式で表せば、

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ということだ。ではnxnの2次元の平面をn+1に拡張する場合はどうなるか。

まず、2つの方向に列を加える。

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すると、角に1つ分だけ欠けた部分が登場するのでそこに1つを追加する。

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こうしてn+1の平面が完成する。

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これは式で表すと、

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である。この式を忠実に再現したことになる。

次は3次元立方体の場合である。まずは3つの方向に平面を追加する。

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追加した平面と平面の間に列を3ついれる。

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ここでも角に1つだけ欠けた部分が登場するのでそこに1つを追加する。

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こうしてn+1の大きさの立方体が完成する。

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これは式で表すと、

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であり、この場合もこの式を再現した形である。最後の「+1」が最後に追加する角の部分の1個に相当する。

さて、問題は4次元の場合である。式を先に書いてみると、

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これも3次元までと同じような手順で考えることができるような気がする。しかし、そもそも4次元の超立方体の形はよくわからない。

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しかしこの4次元超立方体に追加していくのは、立方体、平面、列、そして角の4種類であり、これらの形は明確にイメージできる。また、追加する個数もそれぞれの個数が4,6,4,1であることも式から明らかである。

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この事実を元に4次元超立方体の形のイメージがつかんでみたい。

気になっているのは最後に登場する「角」である。5次元の場合の式は、


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であり、ここでも最後の「角」が存在する。一般に、

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であるから、全ての次元の超立方体には最後の「角」が存在することになる。この最後の「角」の正体を明らかにしたい。

九九のこと

掛け算の「九九」はなぜ「九九」というか。それは最後が9x9で終わるから。そうかもしれない。でも、そうでないかも知れない、と思いついて昔の子供向けの算数の教科書を調べてみた。すると、これが見つかった。

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時は平安時代、源為憲による『口遊(くちすさび)』という児童向けの教科書である。千年前以上に書かれたものであるが、これを見て驚いた。

まず、九の段から始まっている。それも「九一」ではなく「九九」から始まって順に下がっていく。そして、次の八の段の最初は「八八」である。七の段は「七七」から始まる。交換の法則を使って段数が増えるたびに数が減っていくので合理的である。掛け算の順番が違うだけで間違いとだする型にはまった現代の先生たちを、平安装束の為憲が千年の時を超えて嘲笑しているように思える。

それにしてもなぜ「九九」から開始しているのだろう。こんな大きな数字で難しいほうから。しかし、本当に9の段は難しいのだろうか。為憲の九九と同じ順番で数字を並べてみる。

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確かに数字は他の段よりも大きい。しかしよく見ると並びに規則がある。10の位と1の位の数を足し算するとすべて9で同じだ。またそれぞれの桁の数字はきれいに1づつ増えたり減ったりしている。結局ちょうど真ん中から数字は鏡のように対称に並ぶ。

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他の段を眺めてみてもこんなきれいな規則は見当たらない。

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確かに7の段は覚えにくくて子供のころから嫌いだった。他の段についても全体を決定づけるような規則は見当たらない。結局、9の段が最も整然としているのである。

他の段にこのような規則がないのは、7とか8の数字に問題があるからだろうか。7,8のプライドのために言うが決してそうではない。これは10進法を採用していることからくる問題である。その証拠に8の段を9進法で、7の段を8進法で書いてみる。

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このように10進法の場合の9とほぼ同じ規則で数字が並んでいる。

ここで現れる「71」は「七十一」と読んではいけない。9進法なので「七一」とでも読むべきものである。これをこんな風に書いてみる。

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これを10進法に直すことになるが、9の段から開始すればこの「七九」が63であることはすでにわかっている。それに「一」を加えるので64、これが「八八」の答えになるのである。その過程を下図に示す。

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この一連の手続きを下図に示す。

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9の段は整然としたルールで求められ、8の段はその結果を使って求められる。この手続きを繰り返すことによって7の段以下も決定して九九全体が完成する。

10進法の場合を説明してきたが、もっと上の進法だとどうなるだろうか。例としてコンピュータサイエンスではおなじみの16進法について考えてみる。16進法だと「九九八十一」に相当するのは「FFE1」である。

この場合のF(=15)の段は、

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となる。ここでも10進法の9の段で見たルールがそのまま適用されていることがわかる。16進法においても、同じ手続きで15の段から下の段を順次並べていくことができる。

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以上述べてきたように、日本の九九は平安の時代から9の段の数字の並びの持つ秩序を利用して次の段数を次々と生み出すことができるように「九九」から並べることにしていた。なのでその愛称は当たり前のように「九九」なのである。この考え方は現代のコンピュータサイエンスに対しても十分威力を発揮する。為憲、恐るべし。

マリオはリオに(その3)

前回までマリオの描く軌道の方程式として、

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が得られた。この2次形式で表された曲線の形状を決めるのは次の行列式Δである。

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マリオの軌道は、Δ=0の場合は放物線あるいは直線であり、Δ≠0の場合は円または楕円となる。それぞれの場合で具体的な軌道を計算する。

①Δ=0の場合:放物線(直線を含む)

この場合の速度の条件は、

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である。この場合、マリオは東京、リオを通る直線上で単振動する。振幅は初速度に依存する。

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特に、

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の場合は、マリオが東京・リオ間の直線の土管に初速度0で入る場合であり、この時マリオは東京・リオを両端とする単振動となる。

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②Δ≠0の場合:円または楕円

軌道がきれいな円となるのは、

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の場合である。

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ここで、初速度Vy0がRω以外の場合は楕円となる。例を以下に示す。

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上で述べた以外の条件では軌道は傾いた楕円となる。

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特に、

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が成り立つ場合は直線x=yに対して対称な傾きが45°の楕円となる。この場合の例として、

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の場合の軌道を下図に示す。


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マリオはリオに(その2)

前回は①東京・リオ間に直線の土管を掘った場合、②地表すれすれを脱出速度ギリギリでマリオを発射した場合の2つのケースでその運動と到達時間を計算したが、今回はそれをさらに一般化してみる。



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このようにある中心から距離に比例する力Fが中心に向かって働く空間を考える。

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ここに半径Rの地球を仮想的に置く。この力は中心からどこまでの距離においても、つまり仮想的な地球の外でも働くものとする。

また、マリオはこの場の中で地球内部でも自由に運動できるものとする。まずは自由な空間での運動を解析して、その後でその軌道に合わせた土管を掘る、という順番で考える。

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上図のように円の上端を東京、下端をリオとして、マリオを東京から任意の方向、速度で発射する。この時のマリオがたどる運動を解析してリオに到達できる速度の条件を求める。

まず、マリオの運動方程式は、

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である。ここで、

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とおけば、

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と書ける。これを解けば、

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となる。ro、voはマリオの初期条件である。特に今回は、発射位置として、

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であるので、

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これより、マリオは発射条件によらず周期2π/ωの周期運動をすること、つまり再び東京に戻ってくることがわかる。

また、

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が成り立つので、どんな発射条件だったとしてもマリオは必ずリオに到達する。そしてリオ到達時のマリオの速度は、東京の発射時と同じ速さで向きが反対である。また、リオまでの到着時間は、 

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でありこれも初期条件によらないことがわかる。続いてマリオの描く軌道を考える。

前述のx、yの式において、

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として、ωtを消去すると、マリオの描く曲線の方程式として

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が得られる。

次回はこの曲線の方程式に基づいてマリオが描く軌道について考える。