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サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

格子点をくぐり抜けて(補遺)

今回の格子点の解析とは話題は少し離れるが、解析の途上で気がついたことがある。こちらの方がむしろ新鮮な驚きがあったのでここに補遺として記しておく。

下図はおなじみのパスカルの3角形である。一般項を合わせて示す。 

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今回、解析の途上でこの3角形の変則型が登場した。それは列の並びで交互に正負の符号を反転させたものである。

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まずこれを軽く眺めると、横一列の項を足し算すると「0」になることはすぐにわかる。しかし実はそれだけではない。 

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このn組の恒等式群がすべて成り立つ。これらはまとめると、i=0~(nー1)の任意の整数に対して、  

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今回発見したのはこれに関する次の定理である。

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(nー1)次の多項式は一般に、 

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と書かれる。分かりにくいので具体例として2次多項式の場合で示す。

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この2次多項式において任意のa1~a3の値に対して、

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が、不思議なことに必ず成立するのである。

ぜひ、係数a1~a3に適当な数をいれてみて試していただきたい。係数a1~a3は一般の実数であり、分数や小数、無理数だった場合でも成り立つ(実は複素数でも成り立つ)。また、a3=0等の場合、つまり2次式ではなくて1次式だった場合でも成り立つ。これにより定理は、「(n-1)次以下の任意の多項式」と書き換えることができる。


この定理の一般的な証明は意外なことにシンプルである。多項式の展開式を代入して総和の順序を入れ替えて、前述のn組の恒等式を使うだけである。
 

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パスカルの変則3角形の自由度はこれだけでは終わらない。これまで、P(n)の開始は当たり前のようにn=1、つまりP(1)としてきたが、実はそれに限定されない。

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は、任意のi=0~(n-1)について成り立つ恒等式だが、さらに任意の整数mに対して、

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という自由度がある。

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などは、例えば、

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などもすべて成り立つ。この性質によって、2次多項式の例では、

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を満足していたが、この自由度によってお隣の、

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は勿論のこととして、 

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などもすべて成り立つ。しかもすべての2次多項式に対してである。

今回の定理は少し形を整えると次のようになる。

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となる。この定理を用いると、パスカルの3角形の両端が”1”であることを利用して、前稿までの格子点の定理を簡単に証明できる。

パスカルの反則3角形には「懐の深さ」のようなパワーを感じる。このパワーの根源はどこから来るのだろうか。今回、
多項式解析で偶然見つけたものを報告したが、恐らくこれだけでなく他にも素晴らしい秘密が潜んでいると予想する。