風呂場で湯舟につかって、壁のタイルをぼんやり眺めたときに考えたことである。
隣り合う縦線で任意の格子点を選んでみる。
この2点を通る直線をひく。
縦線に沿って眺めてみると直線はすべての縦線で格子点の上を通過する。
最初にどんな2点を選んでもそれは成り立つ。直線だから当たり前であろう。曲線だとそうはいかないだろう、と考えた。
今度は並んだ3点を選ぶ。そして、その3点を通る放物線を考える。
同じように縦線を眺めてみると、
直線と同じように、やっぱりすべての縦線上で格子点を通過する。単なる偶然かと思って幾通りの場合で試してみたがやはり結果は同じで、必ず格子点を通過する。さらに、4点の場合(3次曲線)でやってみたが方程式は複雑になるもののこれも同じくもれなく格子点を通過する。
こうして次の定理が予想される。
定理1:
n個の整数(a1~an)が与えられたとき、
となる(n-1)次の多項式が一意に定まる。
定理2:
この多項式はすべてのn(1~n以外も含む)について整数である。
この定理が正しいとするとその範囲はかなり広い。例えば、100個の点を指定して得られるnの99次多項式について、n=10,000を代入したらそれは整数となる、ということである。
とすれば、
と表せる。この行列Vはヴァンデルモンド行列と呼ばれているもので、今回のようなケースでは行列式が0でないことが分かっている。よって、行列Vには逆行列が存在し、
と表せる。これによって定理1が証明された。
定理2については、1~nについて、
が整数であるときに、
が整数となることが示されれば、すべてのnについて整数となることが証明される(数学的帰納法による)。具体的には、
となる関数fを求めて、それが任意のaに対して整数値をとることを証明すればいい。
以下、その計算を行う。ここでは(1-x)の2項展開式を活用する。
において、x=1を代入すると、
が得られる。以下、①~③の手順を繰り返す。
①両辺にxを掛ける。
②xで微分する。
③x=1を代入する。
結果として、下記の恒等式群が得られる。
となる。これをkの値で並べて行列表現する。
となるCを用いて、最後の項を左辺に移項すると、
と表わされる。ここでヴァンデルモンド行列Vが再び登場している。
左辺は明らかにan+1に他ならない。右辺については、
であるから、下記の式が得られる。
anは条件よりすべて整数である。また、係数もすべて整数であるので、an+1は整数となることが示された。以上によって定理2が証明された。