トランプの神経衰弱ゲームは記憶力の勝負であるが、先手・後手は公平ではない。記憶力が同レベルだとすれば記憶を多く蓄積できる後手が有利となるはずである。どの程度有利なのかを計算する。単純化のために下記のルールとする。
ルール1:後手2枚記憶
1.2名での対決とする(先手・後手)。
2.先手・後手1回ずつの勝負とする。
3.後手は先手が開いた2枚のカードを記憶しているものとする。
4.先手がそろった場合はその時点でゲームは終了で先手の勝ちとする。
4項は一見先手に不公平にも思えるが記憶力を活用できないことに対する先手へのハンディの位置づけである。
2項によって必ずしも勝敗がつかない場合も出てくるがそれはここでは気にせず、先手・後手の勝率の大小比較のみを行うものとする。
トランプ52枚をフルで使った場合の先手・後手の勝率を計算してみる。は結果のみ示す。
となる。つまり、後手が3倍程度有利ということになる。普通は次の順番の先手はさらに記憶が蓄積されていくのでさらに勝率はあがる。回を重ねていくたびに、記憶力の要素が支配的となり、序盤の不公平については棚上げされていく。
さて、このルールでは後手が圧勝ということになるが、何かルールを変えて公平に持っていけないか、ということで次のルール2を考える。
ルール2:後手1枚記憶
1.2名での対決とする(先手・後手)。
2.先手・後手1回ずつの勝負とする。
3.後手は先手が開いた1枚だけのカードを記憶しているものとする。
4.先手がそろった場合はその時点でゲームは終了で先手の勝ちとする。
ルール1との差は3項、後手は開いた2枚の中で1枚だけしか記憶できなものとする。後手はもう一枚についてはカードの場所も忘れてしまうこととする。さて、この場合の結果は、
となり、やや差は縮まったもののまだ2倍近い差で後手が有利である。
さらに先手・後手を公平にする手を考える。先手の勝率を上げるために、カードの枚数を減らしてみることとした。カードのセット数をnとする。1セットはカード4枚に相当し、フルセットではn=13、となる。ルール1,2それぞれで計算した結果する。
まず、ルール1(後手2枚記憶)での勝率の式は、
となり、これをグラフで表したのが下図である。
カードが1セット(4枚)の場合は、必ず当たるので先手必勝である。それは面白くないので忘れることする。セット数が13、つまりフルセットでは3倍程度の勝率の差があるが、セット数が減っていくに従って勝率自体は増えていくものの先手・後手の比率はさほど変動しない。が、セット数が4あたりをした回ると先手の勝率が絶対的、かつ相対的に急激に増加する。しかしこのルールでは2セットの場合でも1.3倍程度後手が有利なままである。
引き続いてルール2(後手1枚記憶)の場合。計算式とグラフは下記となる。
ルール1の場合とほぼ同様の傾向がみられるが、特徴的なのはセット数2(8枚)の場合に、先手・後手の勝率はかなり僅差とすることができることである。惜しいことに依然として後手有利は変わらないが、その差は3%程度なのでかなり白熱したゲーム展開が期待できるであろう。