前2回に引き続き、最終回である。
前回までで、スーパーボールの運動を記述する運動方程式は、
であり、この解は行列を用いて、
という変換で記述される。
ここで登場した行列Aには、
という顕著な特徴があり、これにより2種類の運動が交互に現れることを示した。
さて、ここで出てくる疑問はこの特徴は球体固有のものなのだろうか、というものである。例えば、球体ではなく中空の球殻ならばどうなるであろうか?
このように両者は慣性モーメント(回転しやすさの指標)だけが異なる。これを代入して解けばいいのだが、当然その後でこの二つの途中の形状の場合はどうなのか?などの次の疑問がわいてくることが予想されるので、もっと一般的に求めてみる。
結論から先にいうと、慣性モーメントに依存することなく、
が成り立つのである。つまり中空のスーパーボールを使っても同じように2種類の運動が交互に現れる。
この現象の根源は対象が球体であることではなく、もともとの運動方程式、
の形だけに依存し、係数にはよらない。この式を一般化する。
これを変形すると、
となる。ここで、γ、εは初期運動によって決まる固定値である。変換の前後で式の値が保存される条件(第1式)と符号が反転する条件(第2式)がある。これらはよく見ると、
という固定ベクトルを定義したときに、内積の表示を用いて、
と表せる。これらはxy平面上で直線である。両者の交点が存在しうる運動を規定する。
前者を直線A、後者を直線B+、B-としてxy平面上に作図すると、
解は直線Aと直線Bの交点A、Bである。直線Bは、B+, B-を交互に交代するので、解は交点である点Aと点Bを交互に移動する。これより、2種類の運動が交互に現れることがわかる。
この説明はちょっと分かりにくいので、最初の式、
に立ち戻って直接解いてみる。行列Aを求めると、
となる。こうしてみると、α=βの場合が気になってしまうが、今回の解析ではα、βは符号が異なるのでここでは気にしない。
本行列は一見、複雑だが、これを2乗するとまるで手品のように、
となることがわかる。
これは任意のα、βについて成り立つので、元の方程式と見比べてると慣性モーメントには依存しないことがわかる。また、スーパーボール的な反射のルールである「床面接触時に床面からの摩擦力を滑ることなくきちんと受け止める」を守りさえすれば、形状も球形にこだわらず、多少ひしゃげていても大丈夫である。もちろん、ラグビーボールのように尖って別な動作が発生しない範囲において、である。