★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

アビー・ロードのこと

 ホームズで有名なロンドンのベイカー街にはシャーロック・ホームズ博物館があるが、その隣にはビートルズのショップである。

★London Beatles Store

Beatles Merchandise Store - The official website of the London Beatles Store

 ホームズの博物館は有名な221B番地、こちらは231番地。地下鉄のベイカー・ストリート駅を降りて、徒歩約3分。実はこの店の存在は知らなかった。ホームズ博物館に向かって歩いていたときに、見覚えのあるイエローサブマリンの黄色い字体を偶然見つけて立ち寄ってみた。

  f:id:taamori1229:20151220170434j:plain

 BeatlesにからんだTシャツ、ジャンパー、帽子、人形、コースター、時計、ギターピックなどが小さな店内に所せましと置かれている。親切なことに日本人の店員さんもいて日本語で説明してくれる。

  f:id:taamori1229:20151220182616j:plain

 当時のコンサートチケット、パンフレット、ファンクラブの会報、アイドル雑誌の記事などのレプリカを購入。60年代の気分を味わった。

  f:id:taamori1229:20151220182457j:plain

 偶然ではあったがBeatles気分が盛り上がってきたところで、有名なAbbey Roadを目指すことにした。ベイカー街駅から地下鉄Bakerloo線で4つ目のMaida Vale駅で下車。そこから地図を頼りに東向きに歩きだした。どこにでもある閑静な住宅地という感じで、歴史的なアルバムが生まれた場所というムードはどこにもない。駅から10分ほど歩くと、Abbey Roadに交差する。通りの左右を眺めてみると右手の少し先に人が集まっているのが見えた。群衆というほどではないが10名程度が歩道のこちらとあちらに何をするでもなく立っている。あれが例の横断歩道だろう、とわかった。

 Abbey Road Studioは横断歩道の目の前にある。

 

  f:id:taamori1229:20151220182758j:plain

 スタジオの敷地に入って写真を撮っていると出ていけ、と叱られた。

  

  f:id:taamori1229:20151220183033j:plain

これをジャケット写真と比べてみる。

 

  f:id:taamori1229:20151220195032j:plain

 あのジャケット写真が撮られたのは、1969年8月8日の午前11:30頃であった。まずは夏と冬で木の葉の量が圧倒的に違う。もともとポールはスタジオでの収録中からサンダル履きだった。幾度かサンダル履きで写真を撮ったあとで最後はこの写真のように裸足になった。それがポール死亡説の流布につながっていく。左手に駐車してある車のナンバーは"IF28"。これが「もし生きていれば28才」と解釈されたりもした。

 集まった人たちはジャケット写真と同じように横断歩道を歩くところを写真に収めようとするのだが思いのほか交通量が多く、チャンスはなかなか訪れない。ちなみに今の写真でセンターラインや歩道沿いのラインがジグザグの形をしているが、これは車の運転者に横断歩道が近いという注意を促すものらしい。

 アビー・ロードというアルバムはBeatlesの最後のアルバムである。かつてのバンドとしての一体感はない代わりに、メンバそれぞれの才能はピークを迎え、楽曲のすばらしさに加えてメンバ全員の演奏自体も円熟味を帯びている。この素晴らしいアルバムを決して和気あいあいとは言えない空気の中で淡々と仕上げていったところにBeatlesの本当のすごさを感じる。

 このスタジオでの録音の後、彼らが一緒に演奏することは二度となかったのである。 

 

  f:id:taamori1229:20151220201826j:plain 
      <アビー・ロード・スタジオ前の落書き>

『惑星ソラリス』(擬態の一様式として)

 以前、最新刊の『ソラリス』を紹介したが、ソラリスの海の不思議な性質は擬態の一様式であると理解することができる。擬態といって思い出されるのは、星野之宣の『植民地』という短編作品に登場する奇怪な擬態生物の話である。

 

taamori1229.hatenablog.com

 

  f:id:taamori1229:20151115211007j:plain

 『植民地』に登場する擬態生物は彼らが一番強いと思われるものに姿を変える能力を持っている。目的はあくまで自己防衛であり、あくまで外見だけの擬態である。当初はギーガーと呼ばれるただ大きいだけの愚鈍な生物に擬態していた彼らだったが、惑星を征服しようとして派遣された人間たちがギーガーの殲滅を進めるのを見て、人間がもっとも強いものと理解して彼らは人間への擬態を開始していく。それも人間のリーダの姿に擬態する。それがゆえに人間たちは精神錯乱・疑心暗鬼を起こし自滅していくというストーリーである。われわれ人類と未知の生物との出会いのひとつのを示唆している。彼らは人間を攻撃するわけでも敵対視しているわけでもない。ただ擬態という様式がそれに触れたことのない人間たちを大きな混乱の中に追い詰めていくのだ。

 そして『惑星ソラリス』では未知の知性との出会いとして別な形の擬態を提示している。ソラリスの海は人間の頭脳をスキャンし、そこでもっとも支配的な意識を理解し、それを実体化、つまり擬態する。死別した妻だったり、子供だったり。はたまた実直そうな博士に対してのそれは、なぜか奔放な黒人女性だったりする。

 愛する人と死別した時、記憶の中で愛する人の成長はその時点で停止する。だから別れた時の年恰好で現れることになる。 

  f:id:taamori1229:20151115214840j:plain

 そして登場した彼らの発言、表情、行動様式は結果的に作り出した人の記憶、認識の範囲の中である。従って本物とは違うであろう。ではその違いとはどこが、どう違うのか?

 一例を示そう。その人の着ていた服の色やデザインはなんとなく覚えている。でも、細かいところの構造は知らないし、覚えていない。服を脱がそうと背中の紐を解けばいい、とは気が付くのだが、 

  f:id:taamori1229:20151115215348j:plain

 ご覧のとおり、紐を解いても脱がすことはできない構造であることに気が付く。それもそのはず、実態はあって似てはいるものの、結果的に自分の中の記憶・意識以上のことは実体化されないのである。

 ここで我々はふと基本的な問題に立ち返ることになる。

 我々は果たして愛する人・物の何をどこまで認識できているのだろうか。

 ソラリスの主人公は亡き妻の幻影に別れを告げ、遠く地球の故郷の美しい田園風景に思いをはせる。そこには年老いた父が自分の帰りを待っている。

  f:id:taamori1229:20151115221115j:plain

 思いを馳せるのみならばよかったのだが、それを見たソラリスの海はあろうことか。。。

 

  f:id:taamori1229:20151115221414j:plain

  f:id:taamori1229:20151115221343j:plain

 

 ソラリスの擬態の目的は自己防衛のためなのか、親交の意味なのか、我々の想像を超えた何かなのか、は結局最後まで語られない。新しい知性との出会いの一形態を提示したに過ぎない、とレムは語るのみである。

 さて、余談となるが、映画に出てくるソラリスへの出発前に車で町を走り抜けるシーン、これは実は70年代の東京首都高の映像である。

 

  f:id:taamori1229:20151115220310j:plain

  

郡山・十字屋

 福島県郡山市を訪れた。夜まで少し時間があったので駅前をぶらぶらしてみた。すると商店街の中に十字屋さんという楽器屋さんが目に入った。

  f:id:taamori1229:20150812093812j:plain

 しばらく店内を見た後で最新の小型チューナーを購入。クリップがあって楽器に固定できる。1,200円。

 f:id:taamori1229:20150812094023j:plain  f:id:taamori1229:20150812094046j:plain

  これ以上小さいと逆に使いにくい、というレベルまで到達している感がある。

  店を出て店頭を振り返ってみたときに思い出したことがある。ここには高校生の時にはるばる電車に乗ってきたことがある。そう、井上陽水郡山公演のチケットを求めにこの店を訪れたのだ。もう40年前のことになるのだが。店頭でそのポスターを見つけて胸が躍ったことも鮮やかに思い出した。そしてコンサートの当日、オープニングの曲は「夏まつり」であった。

  遠くで太鼓の音が聞こえる。 夏まつりの夜が近づいているのだ。

3度目の正直

 昨年5月来日時の急病キャンセルから早一年。今回もなんとかチケット入手できました。東京ドームのS席です。今年こそよろしくお願いします!

 

f:id:taamori1229:20150215143339p:plain

 


ポール完全復活、再来日!アウト・ゼアー ジャパン・ツアー 2015


I miss Paul! - ★Beat Angels

 

映画:オン・ザ・ロード


映画『オン・ザ・ロード』 | Facebook

 ビート文学のバイブルと言われている『路上/ On the Road』の映画化なので当然、不安はありました。さて観終えた感想ですが・・・

 一般論として、原作小説の映画化については、原作を読んでから映画を見る、映画を見てから原作を読むなど、いろいろと楽しみ方はある訳なのですがこの作品についていうならば、「まず、原作を読む、原作は2度読んでもいい。毎年読むのもいい。旅に出る度に読むのもいい。でも、決して映画は見に行かない。」をあえてお勧めします。

『氷の世界』(40周年記念盤)

 今年は、日本音楽史上の伝説的な名盤である『氷の世界』が発売された'73年の12月からちょうど40周年目にあたり、その記念盤CDが発売された。当時このアルバム(当時はLP)は日本で初めてのミリオンセラーを記録した。

 

  f:id:taamori1229:20141228090802j:plain

 すべての曲はデジタル処理でリミックスされ、当時のLPで渾然としていた各パートがさらに際立ち、参加していたミュージシャンたちの表情までも浮き彫りにしてくれる。ボーナストラックでは『白い一日』のもう一つのアレンジが安田裕美の名リードギターとともに聞ける。

 誰が演奏に参加していたか、表に整理してみた。

  f:id:taamori1229:20141228091514j:plain

 今回、リミックス版を聞いてみて特に印象に残ったのが『帰れない二人』の細野晴臣のベース。シンプルな8ビートの中に16分音符の装飾音を巧みに織り込み絶妙なグルーブ感を作り出している。この曲は、ほかにも深町純のピアノ、高中正義エレキギター林立夫のドラムスのつぼの押さえ方も神がかり的。まさに日本のポップスの創世記における金字塔である。残念ながら、参加したアーチストの中では深町純はすでに故人、そして中森明菜の「ミ・アモーレ」の作曲者としても知られる松岡直也も今年の4月に亡くなった。