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『トウモロコシ畑の子供たち』

 広大な大地に果てしなく広がるトウモロコシ畑。

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 アメリカの原風景ともいえるここを舞台にスティーブン・キングの傑作短編『トウモロコシ畑の子供たち』は書かれた。

 

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 とある旅行者夫婦がそのトウモロコシ畑の中にの街に迷い込む。そこには「18才以上は生きられない」という掟がありそれを忠実に守る子供たちが暮らしている。彼らを支配しているのは「畝(うね)の間を歩む者」という謎の邪悪な存在。この深遠でどこか魅力的な存在はクトゥルー神話を彷彿とさせる。力に頼ることなく、観念・想念だけで読む者を震えあがらせたキング全盛期の傑作のひとつである。

 『キャリー』『シャイニング』『スタンド・バイ・ミー』『ペット・セメタリー』『IT』『ショーシャンクの空に』『MIST』などキングの作品は数限りなく映画化・テレビドラマ化されて、傑作も多い。その例にもれずこの『トウモロコシ畑の子供たち』もクリエイターたちを刺激して映画化が幾度となく試みられた。しかし、映画の方は全くと言っていいほど話題になっていない。

 今回、熱狂的なキング信者の友人の協力によって、映画化されたこの作品をまとめて観るという光栄を得た。まとめて、と書いたのはこれまで6回映画化されているからだ。しかし、これらは続編・シリーズものというわけではなく、迷走と試行錯誤の産物である。

 夜8時から明け方の4時までの8時間、これをぶっ通してみた結果をレポートする。 6つのタイトルはこれ。これを見ただけで迷走振りが伺える。

 

 ①『チルドレン・オブ・ザ・コーン』('84)
 ②『死の収穫』('92)
 ③『アーバン・ハーベスト』('94)
 ④『アーバン・ハーベスト2』('96)
 ⑤『チルドレン・オブ・ザ・コーン5:恐怖の畑』('98)
 
⑥『ザ・チャイルド』('99)

 

 ①はカルト教団的な要素が強すぎて肝心な謎の存在の恐怖が不明瞭、②もその流れか、息子がこのカルト教団に傾倒するのを阻止しようとする主人公のヒューマンドラマになっている。③からは農村から都市部に進出、都市の一角にトウモロコシ畑を作り始め勢力拡大を画策する。④も同じ流れ。⑤でまた農村に戻るが、遊び人大学生が殺害されるのは「13日の金曜日」のジェイソンのノリ。⑥は実は①の後日譚のようなムードではあるが、カルト教団内ゲバから話が発展せず。

 まるでこの8時間、千本ノックを受けているような印象であった。疲れてそのまま眠りについたが見た夢は映画とまったく関係がないものだった。

 この迷走ぶりの原因を考えてみた。まず、根底にあるのはクトゥルー神話の無理解である。これはいかんともしがたい。そして、もう一つが子供たちという放送コードの問題、残忍なシーンには大人たちを登場させざるを得ない。これが原作の子供だけという不気味な雰囲気を破壊してしまう。

 そしてもう一つの原因が決定的なのだが、そもそものこの原作が30ページ程度の短編。これを映画化することに限界があるのではないだろうか。ただし、『MIST(原題は霧)』も同様の中編で映画化は無理と言われていたが、'07年にあれだけの映像化に成功した。いつか、ラブクラフト、キングを正しく継承する者の手による「畝の間を歩む者」の真の映像化を期待してやまない。