★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

キューポラのある街

-あれ?あれはいったい何だろう?

 

-なんだか不思議な形してるね。こんなのどかな住宅地に突然出現したという感じ。
-あれがひょっとしてキューポラなのかなあ。
キューポラ
-昔、そういうタイトルの映画があったんだよ。

 

キューポラっていったい何だろうとずっと謎だった。でもね、キューポラっていう言葉の語感から、きっと宇宙人とかその秘密基地だとかそういうたぐいだろうと勝手に想像していた。
-きっとウルトラマンか何かの影響だね。
-そう、ウルトラセブンなんだけど『狙われた街』というタイトルでメトロン星人が登場する回があって、四畳半の畳部屋でダンと二人でちゃぶ台を前にして人類の未来を協議する場面が印象的だった。
-なんだか、覚えてるような気がする。ちょうど今みたいな夕暮れ時で部屋にも西日が差し込んでいた気がする。

 

 🍉は る ひ🍈 on Twitter:  "ウルトラセブンの、このダンとメトロン星人が対峙する名シーンを軽々と超えてきた、こはると雄二。「田中さんと目が合うと鳥肌が立ってゾクゾクした。心じゃなくて体で感じられた」とたけるさんが言ってた。田中裕子の怪物感おそろしい。そして  ...

キューポラって地元では聞いたことがなかったから、東京にはそういうものがあるんだ、とちょっとした憧れのようなものも感じていた。
-そうだね、東京にしかない、となるときっと高度な技術で作られているはずだ、という勝手な思い込みもあったよね。
-そう言われてみてみると、これも宇宙人の基地にも見えなくもない。すぐにも宇宙に飛んでいきそうにも見えるし。
萩原朔太郎という詩人がこんなことを書いているの知ってる?彼の場合は「鉄筋コンクリート」だった。

-鉄筋コンクリート
-そう、それ。きっと時代的に新しい言葉だったと思うのよ。朔太郎をその言葉を聞いてその正体は何だろうと悩むの。
-正体ってそれ以外の何があるの?
-そこは詩人の本能。言葉そのものの意味ではなく、言葉の語感から刺激されるものの正体が別にあることを直観する。でもそれが何だか分からない。
-そしてどうなったの?
-それをずっと探しづけた彼はとうとう見つけたわ。鉄筋コンクリートの正体は昆虫だって。
-昆虫!?
-そう。それが氷解して彼は悩みから解放されて有頂天になった。それだけの話。
-詩人というのは面倒な人たちだなあ。
キューポラの話だって変わらないよ。あなたにとってそれは直観的には宇宙人とかその秘密基地だったんだから。
-そうかもしれないね。
-まあ、とにかくこれからこれをキューポラと呼ぶことにしましょう。本当に秘密基地ならこんな団地の真ん中にあるわけない、もっと山奥とかに造るはずでしょ。きっと物騒な存在ではないと思うし、なんとなく近所の住民たちと近所付き合いをうまくやっている感じだしね。