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サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

2023年SFの旅

あけましておめでとうございます。2023年、この数字を心を空にしてあらためて眺めてみると、

 

その未来感に圧倒されました。

今年は年末年始はとりたててすることもなかったのでJ・P・ホーガンのSF小説『未来の二つの顔』を読み直しました。

 

学生時代からなので40年ぶりです。あらためて驚いたのはここまで未来を予見していたのか、ということ。携帯電話(操作イメージから察するに恐らくスマホ)、タブレット端末、ネットゲーム、そしてドローン。これらはこの40年間ですべて実用化されました。このSF小説の発表当時はパソコンもまだ「マイコン」と呼ばれ一部マニアに出始めていたばかり、インターネットも始まっておらず、テレホンカードで公衆電話の全盛期。携帯電話などは夢のまた夢。待ち合わせも厳密に時間、場所を示し合わせないと会えない時代で、そのため駅の伝言板が必須だった時代でした。

この小説を読んだときから、映画化を心待ちにしていましたがまだ誰も実現してくれません。実現しないうちにその小説の通りに世の中の方が変わってきたのでもう旬の時期を逸しています。今、映像化してもあまりに当たり前でインパクトはないかもしれません。

映画化ができなかった理由の一つはその物語のあまりのスケールの大きさがあると思います。人間とコンピュータの熾烈な戦いです。それは宇宙ステーション・ヤヌスを舞台にした壮大なシミュレーションです。人間と知性を得たコンピュータははたして共存できるのか、それを賭けた壮絶な戦いが繰り広げられます。

そのヤヌスでのシミュレーションが行われる2028年が目前に迫っています。それが「2023」という数字の与える未来感の正体なのではないかと思います。

今年はそしてこれからどのような年になっていくのかを、SFドラマ、小説、映画、アニメなどの作品とそれらの舞台となった年代をチャート化してみました。

 

これらのSF作品群が示す未来は、かなり悲観的です。今現在はまだコンピュータとの共存を模索している段階ですが、まもなく、それとの相克の時代が始まろうとしています。一部は仮想現実の世界に逃げ込む動きも始まります。そして30世紀をまたずに人類は滅亡し原始時代に回帰して、それがウェルズによれば3,000世紀ほど続きます。

果たしてそうなるか?その分岐点に位置するのがこのヤヌス・プロジェクトです。人類の未来はこのプロジェクトに掛かっていると言っても過言ではありません。残すところあと5年。その審判の日は刻々と近づいています。

余談ですがこの作品で一つだけホーガンの予想と違ったな、と思ったことがありました。それは日本の登場の仕方です。日本はドローンの開発・製造国ということで日本人エンジニア集団が登場します。この作品の発表当時は日本のウォークマンが世界を席巻したころでした。当時、日本は世界にそう見られていたということだと思います。

私も最初にこの小説の発表した頃にエンジニアを目指して仕事を始めたころにちょうど重なり、日本とはそういう国だし、きっとこういう世界が来れば日本はそういう立場でプロジェクトに参画するだろうと信じていました。しかし、今、現代においては決してそうはなっていないと思います。そして、小説を読み返してみると、日本人エンジニア集団は極東の彼方にあって、いつも群れをなして何を考えているか分からない、でもすぐにちゃっちゃと製品を作って持ってくる胡散臭い集団という印象で描かれていることに今になって気がつきました。

現代の日本においては、確かに当時はそういう芸風を得意としていたがそれは諸外国に任せた、そして今は違う段階に入っていて違う形で世界に貢献しているんだ、ということがすらすらと言えるようになることが大切だと感じました。これを2023年頭の辞としたいと思います。本年もよろしくお願いします。