見上げれば新春の青空。
青空を見上げながら近視用のメガネを外してみる。それでも青空は決してぼやけない、ひずまない、にじまない、ひるまない。真に偉大なるものはこちら側の些末な事情など意に介さない。
空の青さの理由については分子による光の散乱という光学的立場、分子群についての密度の揺らぎという統計力学的な立場の２つの学説があり、いまだに結論が出ていないと聞く。
空の青さというのは人類に限らず、光を友として感応する生きとし生けるものが、生まれ落ちてからその幼い目によって最初に観測する物理現象であろう。そんな原初的な現象の説明がいまだに決着していないとは非常に興味深いことである。
かつての中国、杞の国にこの青空が崩れ落ちるてくるのを心配してずっと見上げている人がいて皆から笑いものになっていた。翻って現代、それは決して笑い話ではない。世界のどこかでこの青空が破裂して、災厄の業火が着弾する恐怖におびえながら暮らしている人たちがいる。
太古の昔から人類とずっと友でありつづけてくれた青空は謎を秘めてなおも美しい。その青空が下世話で短絡的で不合理な恐怖の対象となってはならない。いち早く平常に戻ることを心から祈る。そして、世界中のみんなが杞の国の人を囲んで、その心配性のことを心の底から笑い合える日がまた訪れることを信じる。
