若葉の匂う風になれるなら
年老いた恋人たちをなぐさめに
不動堂をめぐってみたい
あなたがたは幸せです・・・
よりそえるだけ幸せだと伝えに
うたう風になれるなら
言い争う若者たちをなだめに
黒松の枝を鳴らしてみたい
あなたがたは幸せです・・・
大声でいつも心を伝え合うから
人生のにおいのする風になれるなら
僕はまた静かな楼門に来よう
にぎわいのあとに淋しさが
淋しさのあとにまた喜びが
そんな人生の風車を
黙って回せそうな気がするから
<高幡不動尊・日野市>
『東京逍遥純情詩集('80~'85)』より