★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

角の3等分装置(原理編)

前回紹介した、角の3等分装置の原理を説明する。

4つのレバー(b~e)が一つの支点aで固定されている。

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c、eのレバーの間には円板がありその中心はレバーdの上でスライドできるようになっている。円板の周りにはバネが取り付けられていて、レバーc、dの間の角度を変えることで円板は自由にスライドする。

この装置の使い方は次のように推測される。

任意の角度∠BACが与えられたとき、

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 ①支点aをAに合わせる。
 ②レバーeを辺ABに合わせて固定する。
 ③レバーcを回していく。
 ④レバーbが辺ACに一致したところで止める。

 以上の操作で、レバーc、dは∠BACを3等分する線となる。

 レバーcとレバーdの関係が分かりにくいので拡大すると、 

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となっている。円板の半径Rと同じ長さの棒がバネiと接続されており、その接続点はレバーcの上をスライドする。棒のもう一方はレバーbの上をスライドするようになっている。バネiの働きによって、この棒とバネは常にレバーcと垂直方向に移動する。つまり、棒とバネの接続点は円板とレバーcの接点と同じ場所になる。

以上の動作によって、

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3つの直角三角形A, B, Cは合同となり、支点aの周りの角度は3等分されるのである。

シュレディンガーのおばちゃん

教授:君はシュレディンガーの猫の話を知っているかな?
学生:はい、聞いたことはあります。
教授:聞いただけでは困るな。ここは量子力学の研究室だ。それは常識の範囲だ。
学生:少しは知っていますよ。猫を箱にいれていっしょに放射性原子が崩壊したら毒ガスが発生する装置もいれておく。そうするとかわいそうな猫はいつか死んでしまう。箱のふたをあけるとそれがわかる。という仕掛けですよね。

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教授:ふたを開ける直前が問題なのだ。放射性原子の崩壊したかどうかは確率的な事象だ。ふたをあける、という観測をするまでそれはわからない。
学生:それは箱の内部の事象を知りえないという人間の認識能力の問題だと思いますけど。
教授:少し違う。量子力学では原子が崩壊している状態としていない状態の2つが同時に存在することができる。ふたを開ける前はどちらの可能性もあるので、結果的に猫は生きているか死んでいるかどちらの状態でもある、ということになる。
学生:瀕死の状態の猫がいるということですか?
教授:違う。しっかり生きているし、しっかりと死んでいるの両方だということだ。
学生:どうも理解できないなあ。ねえ、教授。これは猫のような静かな生き物だからわかりにくいんじゃないですか?もっと生きているかどうかわかりやすい、もっとうるさい生き物で実験してみたらもっとわかりやすいと思いますが。
教授:もっとうるさい生き物?それはなんだろうか。。。
教授、学生:そうだ!おばちゃんだ!


学生:実験装置ができました。大学の正門の前を大きな声を出して歩いていたおばちゃんも実験に協力してくれるというので連れてきました。
おばちゃん:ちゃんとお礼をもらえるんでしょうね。
教授:お金で勧誘したのか。
学生:ちょっと危険な実験だし、それ相応の謝礼は必要でしょう。
おばちゃん:今日は野菜のセールがあるんだから早くしてよね。
学生:それではこの部屋の中に入ってください。
おばちゃん:何よ、この狭い部屋は?
学生:ドアの鍵をかけました。さあ、それでは実験を開始します。
教授:ドアをどんどんとたたいているじゃないか。
学生:それがいいんですよ。じゃあ、スイッチを入れます。
おばちゃん:こんなの聞いていないわよ!はやく開けなさいよ!猫と遊ぶんじゃなかったの?
教授:君はいったいどんな説明をしたんだね?
学生:いいから、見ていてください。
おばちゃん:真っ暗で何も見えないじゃない!早く私を出しなさい!
教授:うるさいなあ。隣の研究室から苦情が来そうだ。
学生:まあまあ。もうすぐ結果が出ますから。


教授、学生:あ、静かになったみたい。
学生:じゃあ、ドアを開けてみます。
教授、学生:あ・・・猫だ!そしてちゃんと生きている。
教授:うむ。やはり、シュレディンガーは正しかったわけだ。
学生:な、わけないでしょ!

角の三等分装置

これは15~16世紀を代表するイタリアの知の巨人のノートの片隅に遺されていた落書きのような絵である。

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一見して何らかの装置とか機械のように見える。しかし説明が記されていなかったのでこれが一体何を意味するか、何を目的としたものなのか長年の謎とされてきた。

この図を詳細に分析してみた結果、これはある与えられた角度を3等分するための装置であることが判明した。古代ギリシャの時代から幾何学の難問中の難問とされてきた問題に関係している。

今年は彼の没後からちょうど500年目にあたる。これも何かの縁であろう。次回はこの装置の原理を紹介する。

 

3次元ピンボール(その3)

話はピンボールから完全にそれてしまうが、次の形式で2進法表記された、

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という、0~1の範囲の数に対して、

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桁数に対応して直角二等辺3角形をどこまでも細分化していくと、最終的に一つの点に収束していく。こうして、0~1の間の実数Fを三角形の内部の点Eに変換することができる。

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いろいろなFの値に対応する点Eが三角形のどこに登場するかについていくつかの例で具体的に計算してみると下図のようになる。

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図中で近くにある点は同一の場所であることを示している。このように別な点Fに対応する点Eが複数存在する箇所がある。ここまで調べた範囲では三角形の周回部では最大2つ、三角形内部では最大4つのように思えるがすべて調べたわけではないのでなんとも言えない。数学的に言うならば点Fから点Eへの写像全射ではあるが単射ではない、ということである。

このぐねぐねした経路がなんとも分かりにくい。これをもう少し見通し良くできないだろうか、と考えて三角形を切り込んでいくという方法を思いついた。そのアイディアを以下に説明する。

まず、三角形を直角部を一番上して斜辺が水平になるように置く。斜辺の左の点を0、右端の点を1とする。


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頂点の数字は、斜辺の両端の数字の中点とする。この図の場合は2分の1となる。


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頂点を含む線で三角形を2等分に裁断する。しかし頂点だけはくっつけたままとする。切断ラインを開いていき、上下を反転させ、下図のようにする。


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点1/2は下の線に着地した。この下の線を便宜的に水平線と呼ぶことにする。こうすると横幅がはみ出してしまうので(√2倍)、横幅が変わらないように縮小する(1/√2倍)。


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これで1回の手順は完了する。こうして一つの三角形が2個になる。引き続いて、2個それぞれの三角形に対して、同じ手順を繰り返していく。

縮小によって三角形の大きさ、面積はどんどん小さくなって0に極限まで近づくだろう。実際に1回の操作で面積の合計は半分になる。最終的には、

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このように全体として最初の三角形内のすべての点Eは水平線に極限まで近づいていく。一度、水平線に移動した点、1/2, 1/4, 3/4, 3/8などはの点はその後もずっと水平線にとどまる。それは三角形の裁断の方法から明らかだ。それらの位置を見るとちょうど数直線上の点Fの位置と合致している。

この手順を逆にたどれば数直線上の点Fから三角形の中の点Eを定めることができそうに思えてくる。しかしそう簡単ではない。ただの数直線を眺めていても種となる三角形の列がどうやっても生みだされない。この過程は不可逆なのである。

この系列に属さない1/3、2/5などは裁断のたびに三角形の左右の位置がふらふらして落ち着かず、水平線に到達するように思えない。これらは1/2,、1/4などと同じ有理数であるはずである。この差は何に起因するのか。

それは2進数表記した時の形である。水平線に移動できる点は、

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 有限の桁数で表示されることである。

この場合は、この点Fを端点として持つ有限の大きさの三角形列が必ず決定される。それにより、上記の手順を逆にたどることで最初の三角形内における点Eを求めることができる。

1/3, 1/5などは1を含む循環小数となるのでこの条件を満たさず、いつまでたっても水平線に到達できない。もちろん、それは1/√2、π-3などの循環小数ともならない無理数の場合も同様である。このことはこの点Fを端点としてもつ三角形列が存在しない、ということと同値である。

3次元ピンボール(その2)


0から1までの実数を2進法で表記する。

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この小数点以下の桁数と数に対応して、2等辺直角3角形を細分化していく。

 

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桁数を進めるに従って経路は複雑化し、3角形内を塗りつぶすように進んでいく。こうして長さ1の線分上の点は、3角形内のどこかの点に対応していくことになる。

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yz平面をz軸を虚数軸とする複素平面と考える。2進法表示の桁数をnとすると、3角形をn回2等分したときの頂点の座標は、次式で与えられる。

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ここで、Anは、

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である。ここでEの各項、

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を具体的に計算してみると、nの奇数、偶数で場合分けされて、

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となり、いずれの場合も実数部、虚数部ともに有理数であることがわかる。Eを求めるときに、級数の和が有限回で終了すればEは有理数であることが保証される。


Fが有理数であるときは、2進法表記でも循環部が現れる。有理数を2進法で表したときの一般的な形式は、

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である。

今回の問題は偶数・奇数で挙動が分かれるので便宜的に、

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循環部を2pの幅とみなし、偶奇性の影響を抑えて計算を容易化する。こうすることでによってEの各項については循環の規則に従って、

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が常に成り立つ。本当はこの2が邪魔なのだが、2を削除するとpが奇数の時に成り立たず、場合分けがややこしいのでこうしている。

この式を用いて、Eの無限級数を計算してみると、


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と簡略化される。ここで、


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を用いた。こうしてFが有理数の場合には、Eの級数計算が有限回で終了することが分かる。前に示したように各項は実数部、虚数部ともに有理数であるので、その有限回の加算結果も同じく有理数となる。

こうして、3次元ピンボールにおいても、2次元の場合と同様に格子点の穴に入る確率は0であることが証明された。

と言いたいところだが、点Fが無理数の場合にそれが有理数の点Eに写像されないことを証明しないといけない。逆に言えば、有理数の点Eに対応する点Fが
すべて有理数となることである。確かに点Fが無理数の場合、点Eの計算は無限となるが、無限となるだけでそれが無理数であることの証明にはならないからである。

3次元ピンボール

taamori1229.hatenablog.com


ピンボールの定理を3次元に拡張する。

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原点Oから球を打ち出す。打ち出す方向はこの図に示した通り、x,y,z≧0の範囲だけを考える。

原点O付近を拡大すると、

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となり、球は⊿ABCのどこかの一点Dを通過して飛んでいく。⊿ABCのyz平面への写像を⊿OBCとして、点Dに対応する点をEとすれば、

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点Eはこの二等辺直角3角形OBCの中のどこかの点に対応する。

仮に、点Eの座標が、

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であるとすると、整数a, b, c, dを用いて、

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と表すことができる。この点Eに対応する点Dは、

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であり、この点Dを通過する球の描く直線の方程式は、

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となり、この直線は、

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という格子点を通過し、つまり球は穴に入ることがわかる。

逆に、球が整数a,b,cであらわされる格子点、

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を通過するとする。このとき、球は⊿ABCの中の、

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の点Dを通過し、これに対応する点Eは、

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となり、

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という形となる。

以上のことより、球が穴に入るということは⊿OBCでの点Eの座標がy, zともに有理数であることと同値であることがわかる。また、球が穴に入る場合、格子点の重複を度外視すれば、球の角度に対応した点Eの座標と入る穴の座標は1対1に対応付けられる。

次にランダムに球を打ち出した場合に球が穴に入る確率計算であるが、2次元の場合と異なり球の角度は二つの有理数の組み合わせで表現されるという課題に直面する。これを解決する方法として、ペアノの曲線の考え方を適用する。

OBCを2等分する。

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直角から入れた切込み線の左側を0、右側を1と名づける。これを繰り返して0,1を同じ規則で並べていく。

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これを無限回繰り返す。得られた0、1の列b1, b2, b3・・・を、

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という形の2進数表示と解釈すると、数字は0から1までの間の任意の実数に対応し、一つの実数は⊿OBCのどこかの一点に収束していく。

つまり、⊿OBCの任意の点Eは、数直線上の0から1の中の点Fに対応づけることが可能である。

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これを逆に言うと、点Fが0から1に移動するにしたがって、それに対応する点Eは⊿OBCの内部を塗りつぶしていくのである。次元の異なる線と面が実は1対1に対応しているという不思議な関係性である。

もしも「点Fが有理数であるときに、対応する点Eのy,zの両座標も同じく有理数になる」ことが証明されれば、2次元の場合と同じ結論、「3次元ピンボールにおいても球が穴に入る確率は0である」ことが証明されることになる。次回はこれにチャレンジする。

我が心のピンボール(その3)

格子状に無限に広がる穴に向かって、球を打ち出す。

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ここまで、次の定理が成り立つことを証明した。

ピンボール定理

球、穴の大きさが両方とも0の場合、球の打ち出される傾きの値が、

  (1) 有理数の場合、球はどこかで穴の中に落ちる。

  (2) 無理数の場合、球は永久に穴に落ちない。

  (3) 傾きの値を実数のランダム値として、球を打つことを繰り返した場合の穴に落ちる確率は0である。

 
この考察の過程で次の予想が得られた。

ピンボール予想

球の大きさが0、穴の大きさが0でない場合、穴の大きさがどんなに小さくても、またどんな方向に球を打ち出しても、球は必ず穴の中に落ちる。これは傾きの値が無理数の場合も含めて成り立つ。


これについて考える。


傾きが無理数の場合の例として、

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を取り上げてグラフを書いてみる。

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穴との距離を赤線で示している。この長さは、

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に対応する。実際に値の列を眺めてみると0~1の間でランダムな値をとるように見える。そして、一度登場した値は現れることがなさそうである。このことは次のように説明される。もしも同じ値が2回現れたと仮定すると、小数をとる前の数の差が整数となってしまう。これが√2が無理数であることと矛盾してしまうからである。

さて、今回の予想はこのようにδ(n)が0~1の間でランダムに存在するであろうことを利用する。

まず、0~1の間をN等分する。

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次のN+1個の数列を考える。


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これらは上図のN等分された区画に入るが、最低でも2つの項はどこか一つの区画に一緒に入る。これは例えば、6人を乗せたエレベータで先階ボタンが5つ押されているときに、どこかの階で二人が一緒に降りるはず、といういわゆる鳩の巣原理である。こうして選ばれた二つを下記とする。

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こうして選ばれた2つの差は当然、1/N以下である。また、前述のとおり決して等しくはならない。大小関係で2つに分類して調べる。

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 この場合、
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 なので、

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 となる。穴の半径をRが与えらえれたときに、それがどんなに小さくても、十分大きいNをとることで、

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 とすることができる。ここで、上記と同じ手順を経ることで得られたi, jに対して、

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 となるmを用いれば、

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 となり、球は穴の中に落ちることが示された。この場合は、穴の中心よりも上側の部分に落ちることになる。


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 こちらの場合は逆に穴の中心から下側の部分に落ちる場合である。途中の計算は省略するが、

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 が得られ、やはり球は穴の中に落ちる。