ピンボールの定理を3次元に拡張する。
原点Oから球を打ち出す。打ち出す方向はこの図に示した通り、x,y,z≧0の範囲だけを考える。
原点O付近を拡大すると、
となり、球は⊿ABCのどこかの一点Dを通過して飛んでいく。⊿ABCのyz平面への写像を⊿OBCとして、点Dに対応する点をEとすれば、
点Eはこの二等辺直角3角形OBCの中のどこかの点に対応する。
仮に、点Eの座標が、
であるとすると、整数a, b, c, dを用いて、
と表すことができる。この点Eに対応する点Dは、
であり、この点Dを通過する球の描く直線の方程式は、
となり、この直線は、
という格子点を通過し、つまり球は穴に入ることがわかる。
逆に、球が整数a,b,cであらわされる格子点、
を通過するとする。このとき、球は⊿ABCの中の、
の点Dを通過し、これに対応する点Eは、
となり、
という形となる。
以上のことより、球が穴に入るということは⊿OBCでの点Eの座標がy, zともに有理数であることと同値であることがわかる。また、球が穴に入る場合、格子点の重複を度外視すれば、球の角度に対応した点Eの座標と入る穴の座標は1対1に対応付けられる。
次にランダムに球を打ち出した場合に球が穴に入る確率計算であるが、2次元の場合と異なり球の角度は二つの有理数の組み合わせで表現されるという課題に直面する。これを解決する方法として、ペアノの曲線の考え方を適用する。
⊿OBCを2等分する。
直角から入れた切込み線の左側を0、右側を1と名づける。これを繰り返して0,1を同じ規則で並べていく。
これを無限回繰り返す。得られた0、1の列b1, b2, b3・・・を、
という形の2進数表示と解釈すると、数字は0から1までの間の任意の実数に対応し、一つの実数は⊿OBCのどこかの一点に収束していく。
つまり、⊿OBCの任意の点Eは、数直線上の0から1の中の点Fに対応づけることが可能である。
これを逆に言うと、点Fが0から1に移動するにしたがって、それに対応する点Eは⊿OBCの内部を塗りつぶしていくのである。次元の異なる線と面が実は1対1に対応しているという不思議な関係性である。
もしも「点Fが有理数であるときに、対応する点Eのy,zの両座標も同じく有理数になる」ことが証明されれば、2次元の場合と同じ結論、「3次元ピンボールにおいても球が穴に入る確率は0である」ことが証明されることになる。次回はこれにチャレンジする。