★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

遊星より愛をこめて

 

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◆出会い

ショートカットの髪型が似合う彼女はその会社に入社2年目、メディカルセンターの女医である。彼との出会いは突然訪れた。その日、彼女の所属する会社のスタッフたちは山奥の採石場で任務にあたっていた。そこに黄色いジャンパーにリュックを背負った彼が現れた。彼はスタッフたちの窮地を救ったものの、さらなる試練が彼らを襲った。彼らは一時退却を決定し、その彼もいっしょに会社に連れ帰った。そこで立て直しを図るべく作戦会議を始めた。彼女はそこで彼に出会った。彼はどうみても風来坊に過ぎないけれどまっすぐな涼しい目をしている、そして一緒に苦難に立ち向かってくれる、彼女はそう確信した。さて作戦会議は有効な打開策も見つからない。そこで彼女は急に思い立ったように、彼の前に立ってこう言った。

-あなたの地球がピンチなの。どうしたらいいか教えて。

彼は新しいアイディアを披露し、それは直ちに採用されて見事目的を達成することができた。でも彼女は疑問に思う。なぜ、自分は「あなたの地球」と言ってしまったのか。とっさに口をついて出たその言葉を自分でも理解できなかった。彼は同僚として一緒に仕事をすることになった。しかし彼女はこの疑問をその後も払しょくすることができなかった。その答えは彼との最後の別れの瞬間まで持ち越されていくことになる。

 

◆自宅でくつろく彼女 

彼女は彼を自宅に招待する。とは言ってもそれは彼女の部屋で発生する怪現象の調査を彼にお願いしたからであった。彼女の自宅は60年代風のインテリアに囲まれ、外国の雑誌、人形、陶器、モダンな食器類などが並んでいる。彼は彼女の部屋を見渡してみた。いつもりりしく厳しい仕事をこなす彼女であるがひとたび自宅に帰れば普通の若い女性であることを改めて実感する。しかし彼は部屋の中でひとつだけ異質なものを見つけた。それは壁に貼ってある宇宙図であった。それは作戦指令室に貼ってあるものと同じであることに彼は気が付いた。 
 

◆異次元の世界へ

ある日、彼と彼女は異次元の空間に閉じ込められた。名前を呼びあう二人。声は聞こえるがお互いの姿は見えない。彼女はその日私服であった。白のブラウスにオレンジと黄色のストライプのカーディガン、そしてパンツスタイルである。髪はセミロング。彼は異次元の世界で迷いながらも不思議に思っていた。なぜ彼女は頻繁に髪形を変えるのだろうか、と。


 

◆凍える世界

それからも会社で大活躍を続ける彼であったが意外なところに弱点があった。それは寒さに弱いことである。ある日、大寒波が町を襲う。彼は豪雪の中をさまよい歩いていた。彼女は会社で待機しているが、寒波は会社の中も容赦なく襲いかかる。彼女は工事用の防寒着を身に着けている。彼女は無線で彼にやさしく語り掛ける。

ー温かいコーヒーが待っているから帰ってらっしゃい。

 
◆苛立ち

彼が突然行方不明になる。彼女は彼のことが気がかりで落ち着かない。社長が彼を呼んでいる。不在を告げると社長も機嫌が悪い。牢名主のような先輩がふざけて彼女に声をかける。しかし彼女の機嫌は直らない。彼女はやつあたりで先輩の飲みかけのコーラを取り上げて捨ててしまった。彼女は彼には何か秘密があり自分たちには見えないところで何かと戦っているのでは?と直感する。そう、彼はそのころ命よりも大切なものを奪われてしまっていたのである。そして今それを取り戻すためにとある少女に逢いに行っているところだった。会社では社長がとうとうしびれをきらす。そしてとうとう彼女は彼の代役をかって出るのである。

ー私が代わりに行きます!

 

◆たんぽぽ

彼女は友人のゆき子を彼に紹介したことを後悔していた。ゆき子の弟は心臓に重い傷害がありその日、手術を受けることになっていた。彼女は彼を連れて見舞いにきたのである。手術は成功して握手をする彼とゆき子。病院の玄関先でそれを見た彼女はおもわず一人で車に乗って走り去った。ふと車を停めて草原を歩き出す。そして足元のたんぽぽを一輪取り上げるとまるで少女のようにふっと綿毛に息を吹きかける。小さな綿毛が宙に舞いあがり、春風に乗ってゆったりと流れていく。それをぼんやりと眺めていた彼女は彼に対する自分の気持ちに初めて気が付いた。 

 

◆休日のデート

大きな任務を重ねるうちに彼と彼女の気持ちは次第に接近していく。そして彼は休日のデートの約束を取り付けた。浅草の仲見世でかんざしの店で店員をひやかし、大きな丸いせんべいを買って映画館へ。車で旅をする映画である。せんべいをバリバリとかじって前の席のお爺さんににらまれた。そして遊園地へ。彼はコーヒーカップの乗り物の中で車で旅をする夢を彼女に語る。彼女は彼のその屈託のない子供っぽさにひかれていくのを感じた。

 

◆海辺の町で

次の二人の舞台は海辺の砂浜。彼女はピンク色の水着姿である。しかし会社からは急な用事が入り砂浜を後にする。彼女は脚についた砂を手でふるい落として「The Tigers」と書かれたTシャツに着替える。任務に向かって車を運転しながら彼は思う。彼女の砂を払うようなさりげない姿になぜここまで胸が躍るのか、と。


◆窓辺によりそう彼女

彼がまた行方不明になる。しかし彼女はもう迷うことはない。白衣の彼女は何も言わずに窓辺に寄り添い、彼の帰りを信じて月を見上げる。まるで母のような慈愛に満ちた表情で。そして薄茶色の瞳が月の光を浴びて輝いていた。



◆告白そして別れ

彼と彼女に最大に危機が訪れる。そして彼は彼女に自分の正体を明かす。光が反転し長い髪が逆光の中で揺れ、彼女の表情は見えない。それまで二人を隔てていた秘密が解き放たれ、二人の距離はなくなり気持ちは一つになる。しかし同時にその瞬間こそが永遠の別れの時でもあった。彼には残された大きな使命があった。ひきとめる彼女の手をふりほどき去っていく彼。彼女は叫ぶ。

 

ーいかないで!ダン!

 
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