少々物騒ではあるがこういうニュースが流れた。
カナダのスナイパーが3.5km先にいる標的に命中させたという。
狙撃距離3.5kmは渋谷駅と新宿駅の間の距離に相当する。かの有名なスナイパーゴルゴ13でも最大狙撃距離は2kmと言われているから現実世界はそれをはるかに超えている。当然、弾道は放物線を描くことになるがその途中においてどの程度の高さまで上がるのだろうか。それを計算で求めてみることにした。
記事によると山岳地帯から狙ったようだがここでは地表から地表に向かって発射する場合を考え、空気抵抗、風の影響などの変動要因は無視するものとする。初速度v0、角度θで発射されたライフルの弾道は、水平、垂直方向の座標をx、yとすると時間tをパラメータとして、
と表される。これらの式から再度地表に戻る時刻とその時の水平距離をt0、x0として解くと、
となる。今回の事例では、
ということらしいのでこれを代入してv、θの連立方程式として解くと、
が得られる。続いて弾道が描く放物線の最大高度を求める。垂直方向の式である。最初に掲げたyの式を変形すると、
となる。第一項はちょうど中間地点で最大の高度となることを示しており、第2項がその時の最大高度y0に対応する。
これを実際の数値で計算すると122mとなる。つまり30階建てのビルの高さに相当する。
以上を整理すると、このスナイパーは発射速度1,285km/時のライフルを用いて角度7.9度で弾丸を発射、弾丸は5sec後に最大高度122mに達する放物線を描いたのち、発射から10sec後に3.54km先の標的に命中した、ということになる。