1984-03-03 早春 ★東京逍遥純情詩集 美しい早春は不幸だったふたりに優しい肌寒さを贈るだろう芽生えたばかりの堤防の雑草が遠慮がちになぐさめてくれるだろう死に急ぐことはありませんよ、と美しい早春は古いカーディガンをひっかけて対岸の遊園地の楽隊に合わせて堤防のフロアで円舞曲を踊り傷つきながら生まれてきた日々にさりげなく別れてしまう美しい早春はちいさな望みを抱くために逝き明日をまさぐるために昏れる <江戸川堤防・葛飾区> 『東京逍遥純情詩集('80~'85)』より