読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

★Beat Angels

君がすべきことはただ一つ、ニューヨークへ行くことだ -ジャック・ケルアック

ノブヒコと口座振込

 ある日、ノブヒコは口座振込のために郵便局にいた。振込みの依頼書には次のように記されていた。

 ・振込額は10万円であるが、振込料金は振込先である相手の会社が負担する。
 ・振込額の10万円から振込料金差し引いた額を振込んでほしい。

 というものであった。ノブヒコは窓口の女性に尋ねた。

 -つかぬことをおたずねするが、振込料金は振込額によらず一定かな?
 -いいえ、振込額によって振込料金は少し異なります。こちらをご覧ください。

 

f:id:taamori1229:20161211203829p:plain

 

 今回はこの表の「窓口」の場合になります。そして今回、振込額は10万円で、5万円を超えていますから、振込料金は864円となります。実際にはこれを振込額から差し引いて振り込んでいただくことになります。

ーこれは異なことを。振込額で振込料金が変わるとなるとこの話は簡単ではない。
ーいいえ、簡単だと思いますが。。。
ー今回の金額ならば問題はないが、例えば振込額が5万円だったとする。
ーはい。
ーその場合の振込料金はどうなるかな?
ーはい、この表のとおり864円です。
ーそうじゃな。じゃあ、それを差し引くとどうなるか。
ーはい、49,136円です。
ーうむ。じゃあ、その額を振込もうとしたら振込料金はどうなるかな?
ーはい、この表のとおり、安いほうの648円になりますね。
ーじゃ、私の支払いは振込料金を加えても、49,136 + 648 =49,784円となる。最初の50,000円よりも低くなるではないか。
ーはあ。そうかもしれませんが、今回は額が10万円ですので・・・
ーもう少し詳しく説明しよう。

 ノブヒコはそういうとスーパーの特売のチラシをガサガサと取り出し、その裏側にさらさらとグラフを書き始めた。

 

f:id:taamori1229:20161211204912p:plain

 

ー振込料金を一度決めてから差し引いてしまうと、振込額が変わり振込料金そのものに影響を与えてしまう場合が出てくる。具体的にはこのグラフが示す通り、当初の振込額が50,000円から50,864円の間の場合である。
ーはい。ですが今回は・・・
ー念のため、相手先にこの点をどう考えているか聞いてみてもらえるかな?

 

 窓口の女性はしぶしぶと電話で相手先に問い合わせた。話が終わって電話を置くと、


ーはい、相手先の方はその通りで構わない。どちらかといえばどうでもいい問題だとおっしゃいました。
ーさようか。お手数をおかけした。それでは。

 ノブヒコは振込手続きを完了すると「正義」という言葉をかみしめながら立ち去っていった。窓口の女性店員はその後姿を見送ると小さくため息をついて、冬の淡い日差しを浴びた枯葉たちが煉瓦の歩道の上で小さく乱舞するのをぼんやり眺めていた。