▮冬枯れて記憶舞い飛ぶ岸辺かな
汽車の中で私の前の席に静かに座っていたその人は小雪の舞う最上川を眺めながら涙を一筋流した。
そして今日、その人のいた席に私が座っている。
▮永訣の予感、初雪予報聴き
急を知らせた病院へと向かうタクシーの中、ラジオで天気予報を聴く。季節は冬へと舞い戻る。
▮虚ろなる部屋に冬陽の所在なさ
少しばかりの荷物を運び出し終えて。主なき部屋は冬の訪れを静かに待つのみ。
▮歩を止めて木立侘しき秋時雨
斎場付近の河原の道を散策。懐かしい風景に立ち止まっていると不意に雨。
遠くに鉄橋を渡る列車の警笛の音、上りの列車の時間が近づいている。