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サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

『緋色の記憶』(トマス・H・クック)

 トマス・H・クックの『夜の記憶』を友人から薦められてアマゾンで注文した。届いたのが実はこの『緋色の記憶』であった。裏表紙の紹介文を読んでみると友人の薦めた理由ともさほど変わっていないことに気がついたので、まあこれでもいいか、とそのまま読んでみることにした。 

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 原題は『チャタム高校事件』。小さな田舎町に赴任してきた美しい美術女教師ミス・チャニングをめぐって繰り広げられる陰惨な愛憎劇。少年(今は老人)の淡々とした語り口の中に少しずつ紡がれていく過去の惨劇。過去と現在を行き来しつつも圧巻のラストまで自然に読ませてしまう筆力。ミステリーのつもりで読んだら物足りないと思うはずなのでそちらの筋にはお薦めしない。どちらかというとこれは純文学に属する作品だと思う。少年の父親である校長の父の言葉「罪はおのずと報いを受ける」。これは果たして誰に向けられたものなのか。

 さて意中の『夜の記憶』を読むかどうかについては1年猶予期間をおくことにした。このなんともいえない読後感がどう変わっていくかを観察してから、ということ。


Amazon.co.jp: 緋色の記憶 (文春文庫): トマス・H. クック, Thomas H. Cook, 鴻巣 友季子: 本