★Beat Angels

君がすべきことはただ一つ、ニューヨークへ行くことだ -ジャック・ケルアック

追悼:偉大なる凡へ

片田舎の中学校の国語と社会科の教師であり
林檎畑に囲まれたのどかな田園の中の
とある小さな寺の住職でもあった
よって教師としての特技は説教であった

彼は俳号を「凡」と言った
が、彼の俳句を私は一つも知らない
彼は歌号を「凡太郎」と言った
が、彼の短歌を私は一つも知らない

朔太郎を愛し、自ら詩も書き
中学の卒業文集にそれを載せた
御世辞にもうまいとは言えなかったが
私たちに、青年よ、と呼びかけた

彼は生徒から不幸の手紙を幾通も投函され
全体集会で見えない相手に一時間説教した
策を弄して俺を生徒会長に祭りあげ
原稿もないまま一時間演説させた

彼とは二人で寺の本堂で酒を飲んだ
最近ではまるで旧知の友のようであり
「思春期にありがちな幻影」のようなことを語り合った
二人ともしたたか酔ってそれは終わった

「お前のことは昔からずっと嫌いだった

それが彼の口癖だった
最後に飲んだのは5年前の熱い夏の夜
酔いつぶれて寝ている俺の横で
彼はこうつぶやいた

「でも最近、一つだけ好きになったことがある
 それは一升瓶を抱きかかえるようなその酒の飲み方だ。
 そればかりは中学時代は分からなかったが。」

李白は仙人を訪ねるために深い山に入り
時に、仙人は不在で会えなかったという
私はそれと同じ気分をずっと引きづったまま
この先もまだ死なずにいるだろう

わが心の師よ
これからも我を常に幻惑し、攪乱させよ
そしてあなたの混沌の宇宙の中にいることを許せ
私に告げず姿を消したことへのせめても償いとして

 

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