★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

アイの呪縛からの解放

物々しいタイトルですが数学の話です。不思議な数というとこの2つがいつも登場します。

 

円周率(π)と自然対数の底(e)です。少数点以下の数字は無限にどこまでも不規則に続くので無理数と呼ばれます。これら二つは現実、つまり自然界に列記として存在する数でありそれが実数と呼ばれる由縁です。参考まで無理数でない実数は有理数といって分数の形で表現することができます。

これら2つの不思議な数はお互いにどういう関係なのでしょうか。親密な関係なのでしょうか、それとも赤の他人なのでしょうか。

オイラーという数学者はこの2つの数について次のような美しい公式を導き出しました。

 

1とか0はごくごく基本的な数なのでいいのですが、ここにもう一つ、"i"(アイ)という不思議な記号が登場しました。これは虚数単位と呼ばれます。記号と書いたのは現実の数、すなわち実数ではないからです。虚数、つまりこの世には存在しない数、人間が自分たちの計算の都合から作り出した数です。"i"は想像上(Imaginary)の頭文字。

 

人類にとって重要なこの2つの数が"i"(アイ)で結ばれる、というと聞こえはいいのですが、その2つを結び合わせているのがこの世に存在しない数、虚構の数というところがひっかかります。

そこでこの"i"を使うことなしに、この2つの数が登場する式は書けないのか、ということでずっと探してきました。そして長年にわたる奮闘努力の結果次の式を発見しました。   

 

割り算の形ではありますがどこにも"i"(アイ)が登場しません。私はこれを数学者である友人に披露しました。まずは驚いてはくれたものの、証明を示すように言われて、それを示したところ冷たい反応が返ってきました。

-それじゃだめだ。よく見ろ、証明の中で"i"(アイ)を沢山使っているじゃないか。

そうなのです。これの証明のためには複素解析という"i"(アイ)のオンパレードの手法を使わざるを得なかったのです。

-確かに表面上見えなくなったかもしれないが、この式を成立させているのは他ならぬ"i"(アイ)だ。

私はこの神秘に満ちて魅力的な2つの数を虚構のアイの呪縛からなんとか解放してあげたいと思っています。