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サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

回転による図形の重ね合わせ

以前、二つの合同な長方形が重なって置かれている時に、ある点を中心とした回転で二つをぴったりと重ねることができることを示した。その点を作図するのは非常に簡単で次の通りである。

  

ここで「重なって置かれている時」と言っている理由について少し説明が必要だろう。実は二つの長方形はどんな位置関係にあってもある点を中心とした回転でぴったりと重ねることができる。例えば、

  
このように中途半端に重なっているときは辺を延長して交点を求めればいい。さらに二つの長方形が遠く離れている場合でも、

  

各辺の延長線を描くことで回転の中心の点を作図することができる。むしろこれが一般的な作図方法を示している。きちんと4辺が重なった場合はこれらの延長線を描く必要がなく、もっとも簡単に点を求めることができる。直感的にわかりやすいこともありこのケースを取り上げている、ということである。

さて、次なる問題はこれを立体の場合に拡張することである。

長方形の流れで3辺の長さが異なる直方体を取り上げる。頭の中で考えるには限界もあるので、実際に模型を作ってみた。材料は焼き鳥の竹串である。
  

   


これを用いて2つの直方体の位置関係を固定して次のような作業を行った。

   

このように2つの直方体が入り組んで重なり随所から顔を出す形とした。模型は一番右の図を作成する際に活躍する。

これを眺めながら考えた。空間上にある点が存在してその周りの回転で2つの直方体がぴったり一致するのは確かな気がする。しかし、どんな方向から眺めても複雑怪奇で、規則らしいものは見当たらない。そこで2次元、つまり長方形の場合での手順を分析してそれを3次元、直方体の場合に適用してみることにした。

まずは2次元の場合である。


これを素直に3次元に拡張してみる。模型をじっくりと吟味しないと間違えやすいので注意が必要である。


図はわかりにくいがこのようにして、3次元直方体の場合は最後は3平面の交点として回転の中心点が求められる。

なぜ、こうした作図で求めた点が回転の中心となるのかについてはちょっと煩雑なので省略するがまずは2次元の場合で証明できればそれを3次元に拡張するのは容易である。2次元の場合についての図を下図に示す。詳細な証明は省略するが御覧の通り、2つの図形間には常に緻密な調和関係が成り立っている。

       

さらにこの図に示したように、2次元長方形の作図で引いた2本の直線(上図では橙色)は直交している。それはさらに上のいくつかの写真をみても明らかである。このことから3次元直方体の場合で作図で登場する3平面はお互いに直交しているであることが予想される。任意の場所におかれた直方体の関係の中に直交座標が潜んでいるという事実は大変興味深い。

て、このような回転の中心点は一つしか存在しないのだろうか。実は一般には複数存在する。それは図形の位置関係にはよらず、図形そのもののもつ対称性に依拠している。

例えば、2次元の長方形の場合は2個である。正方形になると4個存在する。円ならば無限に存在してそれはとある直線上の任意の点である。楕円では2個、長方形と同等と理解される。3次元の直方体の場合は4個存在する。立方体に至っては24個存在する。球の場合はやはり無限だがとある平面上の任意の点に対応する。そして楕円体、これも無限に存在する。それは実は2本の直線上の任意の点である。

さて、上記の説明では1個しか取り上げていなかった。それはある選択肢の中で分かりやすい1点だけを作為的に暗黙で選んでいるのである。他の点はいったいどこにいるのか。それを理解するためにはまずは実際に図や模型を作って作図してみることが有効である。2次元正方形の場合についてヒントを下図に示す。

  


2次元正方形の場合は全部で4点ある。ここでは2点のみ示した。残りの2点もぜひ探し出していただきたい。