★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

海水浴の最短救助ルート

ある日、海水浴監視員のA君は監視中におぼれている人(B君)を発見した。

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A君はB君を救助するために砂浜を走ってどこかから海に入り泳いで駆けつけることになる。一番早く駆け付けるにはどこから海に入いるのがいいのだろうか、と考える。

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B君に向かってひたすらまっすぐ走って、泳ぐという方法である。もしも走る速度と泳ぐ速度が等しければこれでいいであろう。しかし、普通は泳ぐ速度は走る速度よりも遅い。そうだとすると泳ぐ距離を一番短くする次の方法を考える。

 

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これならば泳ぐ距離は最短化できるが走る部分が最大となってしまい、これが不経済な気もしてくる。

いずれにしても、走る速度と泳ぐ速度の大小関係で最適な方法は異なってくることが予想される。これを数学的に解析する。下図のように座標軸、座標、速度を定義する。

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A君がB君の場所に到達するまでの時間Tは、

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で与えらえれ、求めるべきはこれを最少とするy0の値である。本式をy0微分する。

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これを"0"とすると、

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一見、面倒な式に見えるが図形として理解すると見通しがよくなる。

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このように砂浜を走る角度をθ1、海を泳ぐ角度をθ2とすると上記の結果は、

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と簡単になる。水陸のぞれぞれの速度v1v2が等しいときはθ1=θ2となり、上述の図(a)のように海岸線を気にせずにまっすぐ進めばいい。一般にはv1>v2と泳ぐ方の速度が遅いのでθ1>θ2となるように、(a)よりはB君に近いところで海に入るのがいい。泳ぐ速度v2が極めて小さくなるとθ2→0に近づいていき、極限では上述の図(b)のように陸路でいけるところまでB君に近づくのがいいことになる。

さて、監視員の話はこれでおわるが、最終的に得られた式は見覚えのある人も多いに違いない。光学でいう光の屈折を表現するスネルの法則である。普通、スネルの法則は媒体の屈折率nで表されるが、屈折率は速度の逆数に比例するので結果的に完全に一致する。以上の考察から言えることは、スネルの法則は言い方を変えると「光はいつでも最短の道を選ぶ習性がある」ということである。