Lesson 15:再会
マディソン市郊外の湖のほとりの遊歩道でベンとルーシーが久しぶりに顔を合わせた。
Ben :あれ?ひょっとしてルーシー?
Lucy:あら、ベンじゃない?
Ben :結婚してマディソンの町から出ていったとディックから聞いてたんだけど。
Lucy:そうなの。今週は休暇で帰ってきているのよ。あなたは結婚してるの?
Ben :まだ気楽な一人ものさ。
Lucy:あら、アンディを連れてるのね?
Ben :いいや、アンディはかなり前に死んでこれはその子供のクレアだよ。
Lucy:まあ、女の子なのね?でもあの頃のアンディにそっくり。あなたの家の家族構成は、お姉さんのアリス、お兄さんのトム、そして犬のアンディ、とわかりやすかった。
Ben :君にだって、妹のメイもいたし、お父さんはパイロットだもんね。今でもあの頃のことを思い出すよ。この湖で夏はみんなで泳いだり、冬はスケートをしたりしたね。
Lucy:そうね。一年中楽しかった。ところでグリーン先生はどうしてる?いつも緑色の服を着ていたけど。
Ben :もう先生の仕事は引退してのんびり本を読んで暮らしてるみたい。後任の先生はエレン先生というんだよ。
Lucy:確かに瞳は青いけど、顔立ちは今風の日本人女性みたい!
Ben :彼女もグリーン先生の教え子の一人で、今でも彼女を尊敬してるから服は緑色に決めているんだって。
Lucy:・・・あの頃、私たちは確かに主人公だったと思う。でも、あなたとの距離はずっと微妙なまま。あなたとの最初の会話だって「こちらがルーシーです。彼女は生徒です。彼女は先生ではありません」、て当たり前すぎない?
Ben :君だって「こちらがグリーンさんです。彼女は先生です。彼女は生徒ではありません」と続けていたよ。お互いにぎこちない会話だよね。
Lucy:あの頃、あなたはどこかはっきりしないところがあった。ちょっとデートして二人の気持ちが近づいたかと思うと、次のセクションでは感嘆文ばかり言ったり、形容詞の活用に凝ったかと思うと、堅苦しい関係代名詞を並べたり。でも、あなたは肝心なことを話してはくれなかった。
Ben :うん、あの頃僕はどうかしていたかもしれない。きっと何かの枠の中で流され続けていたんだと思う。誰かが書いた筋書きに踊らされていただけだった。だから君ともまっすぐに向き合えなかったんだと思う。
Lucy:そうね。私もあの頃、見えない力に何かに操られていたのを感じていた。自分らしさなどは表現する余地がなかった。私も結局あなたと同じだったのかもしれない。
Ben :今、君と初めて会話らしい会話をしたような気がする。やっと本当の気持ちを伝えられるような気がしてきた。でも、君はもう。。。
Lucy:私、実はさっき一つ嘘を言ったわ。休暇で戻ってきてるんじゃないの。実は夫とは離婚してこの街に帰ってきたの。
Ben :そうだったんだ。ねえ、僕たち、もう一度やり直せるかな?
Lucy:いいえ!私たちは現在進行形ではなくて、過去完了形よ!
"not A but B"という構文で理解してね!
◆なぜかマッターホルンを背景にしたベンとルーシー('1975年頃)
険しい山岳を越えてルーシーにかけよるベン。それをぜんぜん見てないルーシー。
この悲しい結末は表紙の時点ですでに予言されていたのかもしれない。