血液型の分布とその変化について数学的に分析してみる。
数学モデルとして次を仮定する。
(1)血液型はO,AB,AA,AO,BB,BOの6タイプを対象とする。
(2) 血液型の割合は男女とも同一である。
(3) 結婚は血液型を問わずランダムに行われる。
(4)一組の夫婦は二人の子供を作ったのち消滅する。
(5)世代交代は全世帯同時に行われ、総人口は一定である。
(6)6つの血液型に有意差はないものとする。
数学的な表現方法としては行列を用いることとする。血液型行列として下記Bを定義する。
ここで、3つの添え字i、j、kの意味は、
とし、行列値Bijkは、
を示すものとする。普通の行列とは違って3次元形式である。この行列の特有の性質としては、次の2つである。
(1) 人口保存則
任意のj,kに対して、
子供は必ず6通りのどれかに属することによる。これにより人口は保存される。また夫婦が対等な関係にあることから、
(2) 夫婦交換則
任意のiに対して、
という夫婦交換の法則が成り立つ。
世代nにおける血液型分布状態を下記で定義する。
ここでx1~x6は各血液型(順にO、AB、AA、AO、BB、BO)の分布をしめしており、
が成り立つ。以上を用いた血液型分布の1世代交代の漸化式は、
で与えられる。これが世代交代を分析するために重要な式である。やや複雑な形をしているが、特に問題となるのは右辺がxの2次の形式となっていることである。これは血液型の分布の推移がすべての血液型の分布に影響されることによる効果である。この非線形性により分布の推移は複雑化することが予想される。
この漸化式が血液型の分布状態を保存することを確認する。
途中で人口保存則、夫婦交換則を適用した。
参考まで、血液型行列Bの具体的な形を以下に示す。3次元なので通常の6x6行列が6つ並ぶ構成である。この表現の中で人口保存則は同じ行・列にある値6個を足すとすべて1になることに対応する。また夫婦保存則はすべての行列が行と列を入れ替えても不変であること、いわゆる対称行列であることに対応する。
この行列表現を使って血型の推移について分析した結果を次回以降報告する。血液型の分布はどのように世代で変化していく性質のものか、現在の日本人の血液型の分布である「A型:37%、O型:32%、B型:22%、AB型:9%」とはどう解釈されるか、そして人類創世期における血液型の分布はどうだったか、などを究明することが目的である。