一日警察署長を無事に勤め上げ、鋭い推理力と直観で難事件の解決にも貢献したアミちゃんはその後も警察署の署員たちの語り草となっていた。
アミちゃんは一日署長を務めたその日、自由な時間を利用して署内を歩いていろいろな人と会話した。そこでのエピソードを記しておく。
アミちゃんは捜査1課の会議室に立ち寄ってみた。ホワイトボードに女性の写真が貼られていて一人がそれを指さしてながら発言した。
-この銀座のホステスが事情を知っているはずです。聴き込みに行きましょう。
アミちゃんは会議中のみんなに向かって言った。
-あ、そのホステスの人ならば知っていますよ。・・・アケミさんですよね?
-あたりです!どうして知っているんですか?
アミちゃんはふふふ、と小さく笑うとその場を立ち去った。
アミちゃんが鑑識の部屋に立ち寄ると、白衣の担当官が刑事と話をしていた。
-ガイシャのシャツに付着していた物質の成分については大学の研究室に分析をお願いしています。
アミちゃんは二人に向かって言った。
-あ、その大学ならば知っていますよ。・・・城南大学ですよね?
-あたりです!どうして知っているんですか?
アミちゃんはふふふ、と小さく笑うとその場を立ち去った。
捜査2課の前の廊下を通り過ぎたときに、中から大きな声が聞こえてきた。アミちゃんはドアをそうっと開けると、課長が若い刑事に指示を出していた。
-よし、その会長に逮捕状を請求しろ!
アミちゃんは部屋を飛び出そうとした若い刑事に言った。
-あ、その会ならば知っていますよ。・・・龍神会ですよね?
-あたりです!どうして知っているんですか?
アミちゃんはふふふ、と小さく笑うとその場を立ち去った。
昼休み時間、署内を散歩していたアミちゃんは階段を降りたところでラーメン屋の若い出前持ちの店員とすれ違った。店員はすぐにそれがアイドル歌手のアミちゃんだと気づき、帽子をとって直立不動の姿勢であいさつした。アミちゃんは、店員に向かって言った。
-そのラーメン屋さんならば勿論知っていますよ。・・・来々軒ですよね?
-あたりです!どうしてわかったんですか?
アミちゃんはふふふ、と小さく笑うとその場を立ち去って署長室に戻っていった。
アミちゃんは一日署長を務めることが決まってから1カ月間はテレビであらゆる種類の刑事ドラマをずっと見続けて勉強したので大抵のことは知っていたのである。