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サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

奇数角形のこと(その2)

以前、英国に7角形の硬貨があることを紹介した。その続きである。 

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 マンホールの形はほとんどが円形をしている。それの理由は蓋が穴に落ち込まないためである。マンホールは幅がどの角度においても一定になることがその形に要求される。そうなければ角度によっては蓋が穴に落ち込んでしまうのである。これを満足する図形を定幅図形というが、定幅図形の形状として許されるのははたしてだけなのであろうか。

 答えはNoである。ドイツの機械工学者であるルーローが発見したルーローの三角形などがそれに含まれる。

 

 

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 このギターのピックのような形状は、ロータリー・エンジンの形状にも採用されているのでおなじみであろう。東京スカイツリーでも中腹部の断面はこの形をしている。定幅図形は三角形だけではない。奇数角形ならばすべて定幅であることが証明されている。英国の7角形の硬貨はルーローの7角形と呼ばれる図形である。作図方法は下図を参照されたい。


 

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 さて、これらが実際に定幅であるかを硬貨と定規を用いて実演してみた。

 

 

 ご覧のとおり、最後に登場したのは実は同じく英国の10角形の硬貨である。実際に滑らかに回りにくいのは角がとれていないことが主要因であるが、仮に軽いカーブであった場合でも偶数角形である10角形の場合は定幅図形とはならず、凸凹した動きになってしまう。

 さて、英国でこのルーローの7角形が硬貨の形状として採用されたのか、という疑問についてだが、推測してみると、

 ①硬貨は自動販売機に使用される。
 ②硬貨が本物であるかを識別するのに挿入された硬貨の幅をチェックする。
 ③そのため形状は定幅図形でなければならない。
 ④つまり、円かルーローの奇数多角形のいずれかでなければならない。

 これらから滑らかで円に形状が近い7角形が選定されたのだと思う。円と違ってルーローの多角形は重心が図形の中心からずれている。それが3角形の場合に最も顕著となるので3角形は敬遠されたのだと推測する。前回記事で東京スカイツリーが傾いて見える理由でもある。

 では、そもそもなぜ円ではいけないのか、という指摘もあるだろう。それに対しては次の答えがある。同じ等しい幅を実現するために必要な図形の面積についてである。これについては、円は定幅図形の中で最も効率がよくない、つまり材料をたくさん使ってしまう贅沢な形状であることが分かっている。ルーローの3角形が最高効率、つまり面積は最小となる。奇数2N+1角形でNが増えていくに従って、次第に円の面積に近づいていく。

 自動販売機の幅のチェックだけを考えると、世界中のコインをルーローの三角形としたら、世界規模で金属資源の節約ができることになる。もちろん、マンホールのふたとしても同じく適用可能である。