前回は、空中で円軌道を描く太陽が作る影の軌跡について個々のケースでの分析を行った。
この過程で次の標準的な影の軌跡の方程式が得られた。
【影の方程式】
この方程式には、パラメータとして、α、β、ɤ、x0, y0, z0, Rの7つが登場して式の形も簡単ではない。そこで線形代数学、特に2次形式の力を借りて、この方程式を一般的に解いてみる。
まず、計算の容易化のために、次のパラメータ、N, Sを導入する。
さらに、今回議論したいのがあくまで曲線の形状であることからxy平面上で自由に回転させて、中心のy座標を0とすることとしてパラメータの数を一つ削減する。
これらを用いると、
が得られる。N, Sを代入してさらに計算すると、一般的に、求める曲線は、
という2次形式の形で表現される。線形代数学によると、この2次形式であらわされる曲線は、
で与えらえるΔの値の取り方に応じて、
という対応関係が成立する。
今回の場合においては2次形式における係数a,b,hは、
となるのでこれでΔを具体的に計算してみると意外にシンプルな次の結果が得られる。
まず、特別な例としてN=0の場合を考える。この時、Δ=0となり影の描く曲線は放物線となるわけだが、
当然、(x0, y0, z0)=(0, 0, 0)、つまり春分の日がこれに含まれる。このNは、2つのベクトル(x0, y0, z0)と(α, β, γ)の内積となっていることから、両ベクトルの内積が"0"つまり、両者が垂直の場合も存在する。この時、太陽の円軌道の中心に向かうベクトルと、回転面の法線ベクトルが垂直となるので、原点から円軌道を見ると円運動ではなく単振動(つまり直線運動)に見えるケースに相当する。この場合も影は放物線を描くことになる。
次にN=0でないケースにおいて、Δの正負の符号を決めるのは、
の値である。この値が意味するところは具体的に作図をしてみるとわかりやすい。
図に示した通り第2項は太陽の円軌道の中心からZ軸方向の一番底となる地点(上図のA点)のZ軸方向の差を示している。従ってこれとz0との差について考察すると、
・点AがZ>0にある場合 ⇒Δ>0 ⇒影は楕円
・点AがZ=0にある場合 ⇒Δ=0 ⇒影は放物線
・点AがZ<0に潜り込む場合 ⇒Δ<0 ⇒影は双曲線
となる。つまり、太陽の軌道が地平線を潜るか潜らないかによって楕円/双曲線が分かれ、地平線に接する場合は放物線になることが一般的に証明された。
普通の太陽だけを考えるならば、必ず地平線の下に沈むので、Δ<0となって影は双曲線を描くが、春分・秋分の日だけは例外的にN=0となることからΔ=0となり放物線(実は直線)を描くことになる。