マーブル・ガムは当たりつきで当たるが出るともう一つもらえることでも有名であった。
これが僕ら子供たちの幼い射幸心を刺激した。そして僕たちはこの当たりは一箱(12個)の中に一つだけあるということもなんとなく経験的にわかっていた。
そしてさらに僕はこの当たりを見つける秘訣を知っていた。
それはこの12個の中に一つだけオレンジの色が微妙に違うものがあり、それが実は当たりである、というものである。下図の右側ならば赤で囲んだものがそれである。
僕はこれを経験的に理解していた。当時は何らかの目印だろう位にか思わなかった。だがその後、製造メーカに勤めた経験からなんとなくこの理由が分かってきた。好き好んで分かりやすくしているのではなく、製造工程上致し方なかったのである。
当たりとはずれは印刷のデザインが異なるので製造工程は区分しなければならない。あるときは当たりの箱だけ、そしてある時ははずれの箱だけをまとめて作らないといけない。このまとめた製造単位のことをロットという。そして当時ははずれだけが入った箱の中にあたりを一つずつ手作業で入れ替えていくのである。
ここで問題になるのは印刷の色の濃淡のばらつきである。普通、ロットの中で個々の箱の色はほぼ同一であるが、ロットが分かれると上図のようにその濃淡にはばらつきが出る。ここから当たりを一つずつ取り出してはずれの一つを入れ替えていく。すると、
微妙に色の濃淡の異なるもの(すなわち当たり)が一つずつ紛れ込んでいく。
恐らく当時、駄菓子屋の店頭に並ぶマーブル・ガムにはよく見ると、一つだけ色の仲間はずれがいてそしてそれが当たりに他ならなかった。現代においては印刷技術も進歩してこういうことはきっとなくなっているに違いない。