ウサギは歩いて川のほとりまで来ました。
でも、川には橋がありません。ウサギは困ってしまいました。
そこへ、ワニが偶然通りかかりました。
ワニはウサギを見つけて、困った顔をしました。会いたくなかったからです。
「おーい!」とウサギは大きな声で声をかけました。
ワニは、ああ、見つかってしまった、と観念しました。
ウサギはワニに言いました。
「この川を向こう岸まで渡りたいんだけど、船になってくれる?」
ワニは困って黙っていました。ウサギは畳みかけます。
「私の言うことがきけないの?」
ウサギに恋をしていたワニは答えます。
「だって、川の途中で僕を毒針で刺すつもりでしょう?」
ウサギは答えます。
「まさか、あなたが川の途中で死んだら私だって死ぬでしょう?」
ワニは分かったようでも、観念したようでもあるように答えました。
「はいはい、一緒に渡りましょう。」
ウサギを乗せた、ワニが川を渡って行きます。
ウサギはその途中、毒針でワニの背中を刺しました。
ワニは川底に沈んで行きました。上にのったウサギも一緒に沈んで行きました。
「こういう生き方もあるよね。」とワニ。
「死に方ちゃうの?」とウサギ。
「生き方と死に方ってどこが違うのかなあ」とワニ。
などと二人で話しながら沈んで行きました。