★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

書評

月の本

秋の夜長は月をみて、月に想いを馳せるなどはいいことです。 意外なことに、月をみて、月のことを長い時間考えることは容易ではありません。月はシンプルな分だけ人間に様々なことを想起させるし、そもそも人間にはそれほど邪念が多いのです。私の場合もいつ…

黒い秘密兵器

『黒い秘密兵器』(全8巻、福本和也原作、一峰大二画)を読んだ。 正確には読み返した、が正しい。小学生当時は野球漫画といえば勿論『巨人の星』が人気だったが、この作品も結構根強いファンが多かった。でも、秘球が次々と編み出されたり、ライバルが次と…

絶世美女描出

古今東西の小説での絶世の美女の精密描写。 最初は、テオフィル・ゴーチエの『クラリモンド』。田舎暮らしのまじめな僧侶がある日教会で偶然に出合った女と恋に落ちる。芥川龍之介の格調高い名訳で。 おゝ如何に彼女は美しかつたであらう。理想の美を天上に…

峰不二子とシンクロニシティ

昨年は江戸川乱歩生誕140年であったが今年は乱歩が亡くなって50年とのことで最近立て続けに乱歩の特集が組まれている。 少年探偵団シリーズの代表作である『黄金仮面』には大鳥不二子なるヒロインが登場する。ヒロインとは言っても悪役(実は怪盗ルパン)に…

『新喜劇思想体系』(山上たつひこ)

この本に初めて出合ったのは大学2年の夏だった。井之頭線、池ノ上駅前の小さな古本屋での出来事だった。最近、完全版が出たので購入。改めて読み返してみた。 一見、格調高そうにみえるタイトル、扉絵、装丁はすべて冗談の一つ。ご存知『ガキでか』の作者の…

幻想と幻滅(ボルヘスとカントール) 

一種の現実逃避だと思うが、時に自分だけの宇宙を作り上げてそこに埋没してみたいと思うときがある。そんな時にいつも手にする一冊の本がある。物心ついた高校生の頃から最低でも一年に一度は読んでいる。不思議なことに旅先でふと急に読みたくなることがあ…