★Beat Angels

サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

★東京逍遥純情詩集

落ち葉の手紙

” 黙って耳を澄ましていると 水に落ち葉の降りかかる音が かすかに聞こえてきます ”” 水のきれいすぎる公園では 年老いた恋人たちの語らいも 密かに華やいでいます ”人生に退屈していたら悲哀との出会いにもう嫌気がさしていたら肩に降りかかる落ち葉にペン…

潮の故郷

かもめたちは飛び去った若者たちも消え去った風化した貝殻たちはほっとため息をついて潮鳴りをきくそしてまつりが近づいてくる潮のふるさとに少し悲しげな太鼓が響き忘れてしまった思い出のように老いた歌声が流れる・・・わしにも逢いたい人がいる・・・潮…

藤色の娘

心の美しい娘ほどすぐに汚れに染まってしまい小さな汚れに傷ついてしまうだから君はこの街でうつむきがちに生きてきたのかでも君は知らないだろう朝早くにこの街が美しい藤色に刷られていることをそして大都会の匂いに混じりひっそりと藤の香りが漂っている…

おもいで

鮮やかな思い出はすてきだだがおぼろな思い出も懐かしいあの秋のハイキングで君は僕になにを告げたのだろうあまりの紅葉にあまりの鮮やかさに僕はなぜか浮き浮きしてしまい都心からのあまりの近さにあまりの故郷らしさに僕は君さえも忘れそうになった本当は…

道案内

川で泳いでいた鯉を見つけてゆっくりゆっくりきたらこの公園に来てしまったの鯉たちに案内されてなんてちょっと素敵じゃない?仕事に追われるあなたにはきっと鯉が必要なのよ恋じゃなくて鯉!色づけた葉をつけて樹々たちが心一面に揺れてどうして今まで来な…

清流

清流の音が激しくて心を洗うみたいだから「行ってみようか」あなたが誘った渓谷の滝紅葉色に染まってとめどなく流れる水音にあなたの声も消されがち「・・・?」「・・・!」ほんとうはあなたの愛の言葉を聞いてちゃんと答えるつもりなのに「・・・?」「・…

夢の抜け穴

ついさっきから緑色の闇の彼方にぽっかりと穴があいて光のように夢たちがとび込むのだ洞窟だ!いたずらな夢たちがひしめき合い邪心なきおののきがこだまして穴はかぐわしい少年の想いに満つるみてごらん!穴に満ちる光こそ大冒険を試みた少年の瞳穴を駆ける…

海の子

水平線をみてしまったらだれもが海の子になる海の子は大切な無数の思い出たちを渚に捨て始める夕陽が水平線に沈むのを見ると捨てるということが少しも哀しくないことに気づき明日という日が必ずくるように思えてくる海の子は心がひろびろとしてきてもそのこ…

帰り道

蕎麦ってやつはねわざわざ食べに出かけるよりは帰り道にふらっと寄るものさ電車に乗って行ったって時間をかけて行ったっていつでも帰り道なのさあの娘は吉祥寺だったっけ呼び出すにしたって蕎麦屋で会うにしたってわざわざ来たなんていえるかいつでも”ついで…

草だんご

ほんとうは君に草だんごが今でも似合うはずだおみくじをひいてみたり少し華やいで手相を見てもらい娘のようにはにかんでごらん コンクリートの中の毎日の生活の庭にたくさんのものを埋めてしまったあの頃の優しさと微笑みとそしてなによりも稚気・・・ もう…

いい季節が来る

きれいな空を残して灰色雲は遠くへ行ったこれからいい季節が来ると釣りをしている老人がつぶやきそうして私には淋しい思い出が残ったいい季節は空の色で決まるのですか?いい季節はふさぐ心も晴れるのですか?おじいさん、あなたは人を愛しましたか?旅に出…

かおりの樹

懐かしさに酔いたくてまたお前のところに来たよいつぞやは秋でこの度は初夏さあの日と同じく若気に満ちてお前はずっと香ってきたのかギターの弦は切れたままだがあの頃の唄は覚えているよけやきの樹よ俺の10年はお前の1日のようだね若さも艶も失った俺に…

愛の橋

小さな胸には余りある重い悩みがあるならば一度あの橋へ連れて行こう鏡のようなきれいな湖水に春は桜が浮かび秋は紅葉が風に流れる橋の上に立って思い切り手紙をちぎったら涙と一緒に散らすのがいいひとつの愛の終りには冬でもないのに雪に変わり優しく湖水…

花折り人

咲きたての花を折る少年をぼくはなぜ叱ってしまったかたとえひそかに手折られてもそれが花と少年の愛ならば花に哀しみはなかったろうに咲きたての花のようなひとに手も触れず唇もかわさずそれが心の愛だなどとはなんと勝手な言い草だろう悲しみながら去った…

語りつくせぬ愛のように

語りつくせない愛があればもう言葉などいらないそしてぼくらは無口になり大自然の一部のように生きよう海と空といくつかの島影がなぜこんなにも溶け合うのかそしてぼくらは無口になり眺めの中にうもれていく僕らの愛を言葉や思惟で飾るのはよそう今ぼくらが…

雨のまちぼうけ

待っていたいな・・・絹糸のような雨の降る夕暮れこの街はにぎやかでもきっと寂しい気分になれそうできることならばぽつりと涙を流してみたいなお腹がすいてきて足元から冷たさが忍び寄って心細さがいっぱい待っていたいな・・・思いっきりメランコリックに…

公園の真珠

昨日あなたは公園にいたかそして一粒の真珠のような風景を拾ったか‐ 意気地なしの子供がひとり 初めて自転車にのれたのだ 暗く湿ったその子の世界に 急ぎ足で青空が現れた‐ 捨てられたコーラの缶に その子の小さな雄叫びが刻まれ 春風に舞う紙くずが その時…

花枕

花は二人のやすらかな故郷花を枕に寝転んで幼い日に再開しよう幼い日はふたりの暖かい故郷花の下で無口になってもう一度愛を語ろうあの日には新しい花が舞いあの日には新しい微笑みが湧きあの日には新しい出発がある花はつぶやいているふたりの幸せに花を添…

故郷にはぐれても

故郷でもないのに銀杏やけやきの巨木があればその場所がわたしを抱きしめる季節の匂いが胸を刺し遠い日が足元から吹き上げてくる夢の他に何もなかった日々心の傷より転んだ膝小僧が痛かった日々校庭の巨木によじのぼった日々そして父も母も生きていた日々私…

希望

真新しい希望だけを枯葉の匂いに包んでこの秋を生きていたい たそがれにはまだ遠い北多摩の野に幸せは風のように漂うのにひと時の歓声はとんぼを追う子供のように邪気もなく美しくやがて消える 史跡は優しく沈黙し心は雲のようにあたたかい真新しい希望とは…

水の故郷

あの水たちに故郷があるならばそれはどんな風景だろう水の母が水の子を作り水の子達が水の村を作るそれはどんな風景だろう 水の故郷にはいつも風があるだろう水と風は仲間になり朝霧と夕暮れが訪れ樹々の梢の先からは雲までが友達の顔をする 水の故郷とは水…

陽だまり

恋人たちは振り向かない公園のその先には賑わう街があるのだから誰も気がつかない陽だまりにさむざむと立ち尽くしていた娘に 親子連れは仲良しで笑いこぼして歩いていく赤い実をくわえた小鳥にさえ誰も気づかない待ちくたびれた娘の涙をくわえて飛び去ったの…

花追い人

花を恋する人がうらやましい花におぼれる人がねたましい芽生えにはしゃぎ落花に涙して優しい目をする花追い人生きていくことは限りない忘却の道のりだ恋した熱を忘れ別れの悲しみを忘れそれらの優しい日々を忘れそれでもまだ死ねないでいる百花の園へ通いつ…

おまつり

一粒の涙が胸をつらぬき惜別の情がぬくもりを呼び覚ます空港のざわめきがなぜか優しいのは無数の小さなぬくもりが幾重にも寄り添うからだ旅立つ人、見送る人旅から帰る人、迎える人孤独な人、陽気な集団この優しいざわめきは人の住む故郷のまつりに似ている…

私は風

四万四千平方メートルの生命感私はこの公園が好きです早朝のもやの中で走る少年に恋したり昼下がりの陽光を受けて散歩する老夫婦に呼びかけたり日暮れには淋しい少女にわざと冷たくしたりするのです私は風四万四千平方メートルの公園をいつもパトロールして…

四季のソネット

春・・・草いきれを手渡すとそれを受けとる人がいた街はずれの優しい息吹だ夏・・・かしましい蝉の合唱少年時代の汗がしたたり街がまた遠ざかる秋・・・ぽつりぽつり落ち葉の会話別れ話に葉を咲かせて街のあかりも落ち葉色冬・・・風がやって来て停まりあた…

風がうまい

今日は木の実のような少年に会いそうな気がする人のいないせせらぎで木の実は一人で遊んでいるな渓谷の大きな岩にまたがりやめていた煙草を思いっきり吸ってみようかなそれとも岩陰で少年みたいに小便をして口笛を吹いてみようかな心が軽いのだ人生の荷物は…

明日になあれ

まねのできない優しさで若い父と母は子供を見つめる池を映す瞳の色には暮らしを思いわずらう気配もなくまねのできない賑やかさで少女たちがさえずりあう豊かな未来が待つようなとりとめのない急ぎ足寒い春の日差しにさえ日焼けしそうな気がするのは何かしら…