物体がまわりの媒質から均一な圧力Pを受ける場合、物体を移動させようとする力、そして物体を回転させようとする力の合計がどうなるかを一般的な形状で考えてみる。
▮推進力F
物体の表面には、表面に垂直な方向nに向かって大きさPの圧力が生じる。
これを物体の全面について積分したものが全体の推進力Fになる。
方向も含めて任意の定ベクトルをaとする。それと全体の圧力Fの内積を計算する。
ここで、ベクトル解析のGaussの定理を適用する。
こうして見事に0となる。ここでベクトルaは任意であったので、結局、
となる。つまり、物体に対する力の合計は0であり、物体は動き出すことはない。形状は任意である。つまりアポロ宇宙船だろうがどんな複雑怪奇な形であろうが同じである。
地上などでは重力が存在し、それにより圧力Pは位置によって異なることになる。それの影響がどうなるかについては付録として巻末に述べる。
▮回転力T
圧力Pによる回転力は、
というモーメントとして計算される。一般に回転は回転軸を定義して計算されるのだがこの場合はそれを気にする必要はない。まずその理由を説明する。位置ベクトルAを回転軸としたモーメントを計算すると、
となる。ここで最後の推進力の結果を使うことで、
となり、回転軸にはよらないことがわかる。推進力が0の場合は回転力は回転軸によらずどこでも一定になる。
次にこのモーメントと任意の定ベクトルaの内積を計算してみる。
この被積分の項は3つのベクトルからなる行列の行列式であるので順番を入れ替えることが可能であり、
として、ここでGaussの定理を適用すれば、
となる。ここで、
を用いた。
定ベクトルaは任意であったので、結論として、
となり、物体には回転力が働かないことが示された。
以上より、均一な媒質の中で表面から一定の圧力を受ける任意の形状の物体に対しては、圧力の合計の力ならびに並びに物体を回転させる力はゼロである。従って静止している物体は移動もしないし、回転することもない。