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パスカルの変則3角形

taamori1229.hatenablog.com

前回、パスカルの変則3角形の話をしたがその続きである。

これまで、
 
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などが見事に0になることを示したが、こうなると次は、

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など、(-n)乗の場合がどうなるかが気になるところである。次の関数σ(n,m)について調べてみることにする。

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まず、最も簡単なm=1の場合について考える。

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次の2項展開式を用いて、

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x=0~1の区間積分することで、

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というすっきりした結果が得られる。これに気をよくして両辺をxで割ってx=0~1の範囲で積分するという操作を繰り返せば、次々にm=2,3…の場合も計算できるか、と考えたがそうやすやすとは問屋が卸さなかった。結構面倒な計算の結果、m=2の場合は、

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であることが求められた。m=3の場合についてはさらに苦しい計算の結果、

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となった。m=2の場合に対して、m=3の場合は、総和が2重形式となる。ここまでくると、一般のmについても次の式が予想される。

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式上はシンプルに見えるが、実は多重型の連分数計算である。具体的に、n=1,2,3の場合で書き出してみると、

 

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mの値によって分数の深さが決まる。このように複雑怪奇であり、n=4の場合などは書いてみようとする気が起きない。下に示した定義の式そのままの方がはるかにシンプルである。

σ(n,m)のわかりやすい一般項を求めることは断念し、漸化式を導くことにした。上記の連分数を注意深く見ると下記が成立していることがわかる。

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ここで便宜的に、

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とした。

この漸化式の存在はEXCELなどを用いて具体的な数値計算を行う際に非常に有効である。n,mが10程度まで計算した結果をグラフで示す。


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σは、nが固定値の場合、mが大きくなるに従って急速に1に収束する。また、mが固定値の場合、nが増えるに従ってゆっくりと0に収束する。では、n,mが同時に増えるような場合は、n、mいずれに軍配が上がるのか。

σ(n,m)の最初の2項を書き出すと、 

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となるが、この第2項である、 

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の大きさがこの力関係を示している。mは2の指数部にあるので絶対的に強力である。n、mが微妙な力関係になるのは、 

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の場合である。グラフを見ると、m=10では、n=1~10程度ではほぼ1に固定のように見えるが、nが1,000程度まで増えれば、1から値は落ち始めると予想される。m=100の場合では、nが10の30乗くらいまで増えないとそうならない。


さて、普通のパスカルの3角形の場合だとどうなるか。m=1,2の場合だと、

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となり、2のべき乗の項が登場する。一般のmについては、おそらく、上の計算結果と同様にして、
 

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となると推測される。おそらく漸化式も同じになるに違いない。しかし、これはnの値の増加に伴って発散するので面白みに欠ける。変則3角形は、交互に符号が反転することで発散が絶妙に抑え込まれ、シンプルで美しい規則性が得られるのである。