★Beat Angels

"Don't use the phone, People are never ready to answer it. Use Poetry." - Jack Kerouac

魔王

父は豪雨の中を子供を胸に抱いて馬に乗り、険しい山道を走らせていた。

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【BGM:魔王(シューベルト)】

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子供は父に買ってもらったシウマイ弁当の箱を大事そうに抱えていた。

-お父さん、おなかがすいたよう。

-もう少しの辛抱だ。もうすぐ家につくからな。

父は、魔王が我が子を奪い取ろうと狙っているのを知っていた。だから馬をとめるわけにはいかなかった。

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父は急に不安を感じて、馬をとめて息子の抱えているシウマイのふたを開けてみた。すると、シウマイのひとつが消えてなくなっていた。父は驚いて我が子の顔を見た。しかし、子供がそれを食べたとは思えなかった。父の背中を悪寒が走った。父は気を取り直して再び馬を全速力で走らせた。

-お父さん、シウマイ食べたいよう。

息子がうわごとのように繰り返していた。通り過ぎていく木々は悪魔に姿を変えて枝を触手のように動かして馬の進路を妨害しようとしていた。

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父は再び馬をとめて、シウマイの箱を開けてみた。すると、またもうひとつシウマイが消えていた。父はその忌まわしい弁当をほうり捨てたい衝動にかられたが、こんどは自分でその弁当を抱えて再び馬を走らせた。

-お母さんが待っているから急ごう。

木々の陰から魔性の女たちが幻惑するように歌う声が聞こえてくる。息子は泣き出しそうな震えた声で言った。

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-お父さん、もう死にそうだよ。シウマイ食べたいよう。

父はまた馬をとめてシウマイのふたをあけた。すると、またもうひとつのシウマイが忽然と消えていた。今回は自分がそれをしっかりと抱えていたはずだった。父は恐怖のあまり叫び出したい気持ちを懸命に抑えた。そのときである。息子が急にまじめな顔をして指をさしてこう言った。

-お父さん、それをよく見て。

息子が指差したのは弁当のふたの方だった。ふたには、3つのシウマイがしっかりとくっついていた。


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