ヨーヨーを設計してみる。
目標はまるで月面で物体を落とした時のようにゆっくりと落ちていくヨーヨーである。
設計条件は下記である。
ヨーヨーを糸で持ち上げる力、つまり糸の張力をNとする。このNによりヨーヨーが回転させると同時に糸がほどけていきヨーヨーが落下していく。ヨーヨーが失う位置エネルギーの一部はヨーヨーの回転エネルギーとして変換され、それによって運動エネルギーは通常の落下よりも小さくなりそれにより落下の加速度が小さくなる。
この原理を利用してあたかも月面にいるときのような落下速度を体感するのがこの月面ヨーヨーの目的である。
質量Mの物体の落下に伴う運動方程式、並びに慣性モーメントIの物体の回転の運動方程式は下記となる。
下に向かう方向を+としている。この2式の関係をつなぐのが支柱の働きである。落下速度と回転速度について、
という関係があり、これより、落下の加速度と回転の関係は、
となる。これを用いて、Nを消去すると、ヨーヨーの落下加速度aは、
となる。ここまでの過程で運動が下方向という条件を入れていないので、この結果はヨーヨーが落下するときだけでなく最下点で跳ね返って上がってくる時も共通である。この式が示すように落下速度を決めるのはRとrの比のみである。逆に言うと、質量M、ヨーヨーの厚みH, Lは任意であって落下速度に影響しない。つまり自由に設計していいことになる。ここで、
というパラメータを定義すると、落下加速度aは、
と表わされる。これをグラフで示したのが下図である。
Rに対してrが小さくなるに従って、ヨーヨーはゆっくりと落ちていく。これと同時にヨーヨーの回転数は大きくなっていく。R=rという支柱のない寸胴型のヨーヨーの場合ではa=2/3gとなる。また、r→0(β→∞)の極限においてはヨーヨーは初速度を維持したまま等速で落下していき(a=0)、位置エネルギーは全て回転エネルギーに変換される。
さて、問題の月面ヨーヨーについては、
が成り立つことが条件であるからβ=5の場合であり、
とすればいい。以上に基づく月面ヨーヨーの設計結果を下図に示す。