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サル・パラダイスよ!誰もいないときは、窓から入れ。 レミ・ボンクール

ボーリング、ボールの軌跡を追って

ボーリングでボールをレーンに沿って真っすぐ投げると両端のピンだけが残るいわゆるスプリットになりやすい。

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そこで、ボールを投げる際に回転を加えてカーブさせて1番ピンと3番ピンの間くらいに到達するようにするとストライクが取りやすいらしい。


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どの程度、ボールに回転を加えて投げたらこのようにできるのかを解析する。


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レーンの方向をx軸、レーンに垂直な方向をy軸とする。図のようにx軸を中心とした回転をつけて速度vでまっすぐに投げた場合を考える。

回転によってレーンとの間に摩擦が生じる。その摩擦による力はy軸方向となる。これによってボールは次第に左に曲がっていく。


y軸方向の運動方程式は、

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ここで、fyy軸方向に生じる摩擦力であり、次の形にかける。

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一般に動摩擦力はこのように接触面の速度に依存せずに応力のみで決まり一定である。これらを解くと、ボールのy軸方向の位置は、

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となる。x軸方向の位置xは、初速度v0で等速度運動であると仮定すると、

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であり、これら2式から、ボールの軌跡として、

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を得る。つまり、ボールは放物線の軌跡を描いてピンに向かう。

続いて、ピンに到達するタイミングでの角度θを計算する。レーンの長さをL、レーン方向の速度をv0で一定とすると、ボールがピンに到達する時間t1は、

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なので、この時点のy軸方向の速度である、

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を用いると、ボールの突入角度θは、

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となる。前述したようにy軸方向へ曲がる原因はレーンとの摩擦力であるがそれがボールの回転速度ωに依存しなのでこの結果にも速度ωは登場しない。摩擦力が発生するようなレベルにさえなっていればきちんとボールは曲がるということである。またそれ以上どんなに早く回転させても効果はない、ということである。

本式を用いて突入角度θを計算で求めてみる。v0はプロボーラーのボールの速度の相場である時速30kmを用いる。レーンの長さLは20m、摩擦係数μはレーンに塗られたオイルの効果を期待して、μ=0.05として計算すると概算で、θ=8°という結果が得られる。


ボールに与えられた回転数ωは摩擦力の影響を受けて次第に減少していく。やがて回転は停止する。回転がレーンの途中で停止してしまうとy軸方向の摩擦力自体もなくなりそれ以上ボールは曲がらない。この回転数減少の様子を解析する。

ボールの回転に関する運動方程式は、ボールの慣性モーメントをIとして、

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となる。球体の慣性モーメントは、半径a(=約0.1m)として、

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であるので、ピン到達の時点での回転数ωは初期の回転数をω0として、

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となる。

第2項がボールの回転数の減衰量である。これを実際の値を用いて計算すると、約4.3回転/秒となる。したがって、突入角度8°を実現するためにはボールを投げる際に5回転/秒以上の回転を加える必要があることが分かる。

さて、実際のレーンではピンに近い一定のエリアはオイルが塗られていない。そのため、ボールがオイルが塗られていないエリアに入ると摩擦係数は大きくなり角度が突然変化する。映像などでピンに当たる直前でカクっと曲がるように見えるのはこのためである。この影響は無視できないのだが、上記では計算容易化のためにこの影響をあえて無視しているので注意されたい。