1980-11-22 故郷にはぐれても ★東京逍遥純情詩集 故郷でもないのに銀杏やけやきの巨木があればその場所がわたしを抱きしめる季節の匂いが胸を刺し遠い日が足元から吹き上げてくる夢の他に何もなかった日々心の傷より転んだ膝小僧が痛かった日々校庭の巨木によじのぼった日々そして父も母も生きていた日々私はあの故郷の日々にいつはぐれてしまったのだろう秋風に巨木は葉を落としもうすぐ晩鐘がなるというのに私はなおも待っている淋しさが抱きしめにくるのを <立川市・普済寺> 『東京逍遥純情詩集('80~'85)』より