夢の抜け穴

ついさっきから
緑色の闇の彼方に
ぽっかりと穴があいて
光のように夢たちがとび込むのだ

洞窟だ！
いたずらな夢たちがひしめき合い
邪心なきおののきがこだまして
穴はかぐわしい少年の想いに満つる

みてごらん！
穴に満ちる光こそ
大冒険を試みた少年の瞳
穴を駆けるこだまこそ
明日を夢見た少年の叫び

さあ、老いぼれ始めたおれの心よ
洞窟に向かって走れ！

　
　　　　　＜稲城・弁天洞窟＞

『東京逍遥純情詩集（'80～'85）』より