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血液型の数理(分析編)

現在の日本人の血液型の分布は次の図の通りである。

 

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A、O、B、ABの比率はおおまかに4:3:2:1と覚えるとわかりやすい。血液型の遺伝メカニズムから考えてみると、O型が意外に多いのはなぜか、A型とB型で2倍もの差がつくのはなぜか、などが不思議に思える。

前回記事で行列を用いた解析手法について説明した。

 

taamori1229.hatenablog.com

世代交代による血液型分布の変化は次の漸化式に基づいている。

 

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本式を用いて最初の3世代分を書き出してみる。

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第4世代以降も同様の式で表せる。上の式はx(2)はx(1)(つまり初期値)の2次式となっている。下の式に上の式を代入すると、

 

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x(1)の4次式となり式の複雑さは増大する。X(4)などは考えたくもない。これを繰り返していくと、 

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となり、x(1)の2^n次式(10世代目は512乗)となって手に負えないように思える。しかし血液型行列Bには計算を容易にする以下ような便利な特徴がある。

すでに前回記事でこの血液型行列Bijkについては、2つの規則があることを説明した。

(1)人口保存則

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(2)夫婦交換則

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これらに加えて血液型行列はその最大の特徴である次の関係式が成立する。

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これの説明は難しい。しかしこれを実際に使って再度x(3)を計算してみると、

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となり、x(2)から変化しないことがわかる。同様にして計算を繰り返すと結果的に、

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のように2通りの値しかとらないことが分かる。

血液型は初期の分布でほぼ決定される。一度は世代交代して初期の分布とは異なる分布になるがその後は何世代交代してもそこから分布は変化しない。つまり血液型の分布は未来永劫安定であることになる。この様子をグラフにて示す。

まずは血液型6タイプ版。20世代分計算してみた。

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続いて同じデータに基づく血液型4タイプ版である。

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実際に初期値がなんだったのかはわからない。ここでは現在の日本人の分布状態にできるだけ一致するように適当に調整してみた。グラフのとおり、最初に一度だけ変化するがその後はずっと変化しない。これ以降、何百世代繰り返してもそのままである。

血液型システムは非常に安定的であると言える。初期値を変えて試してみるとほぼ任意の分布で安定させることができそうに思える。

初期値次第で決まって変化がない、というのはあまり面白くないので一つ仮説を立ててみた。このシミュレーションの条件として各々の血液型には有意差がないとしたが、こんな記事を見つけた。

 

kotobank.jp


詳しいことはわからないが、妻がO型で子供がA型、B型の場合の組み合わせ特有の事情らしい。これに限定するわけではないがこのような血液型の組み合わせ特有の事情というのがあった場合それが血液型の分布にどういう影響を与えるかを考えてみる。

この不適合の場合を例にとると、血液型行列の要素の中で対応する個所として、

 

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オレンジ色の部分を多少調節してみてシミュレーションを実行した。実際には「-3%」とした。この操作によってこの行列は血液型行列ではなくなり、世代交代のたびに分布は変化することになる。

まず、血液型6タイプとしては、 

 

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血液型4タイプでみると、

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という結果が得られた。今回の問題の組み合わせの子供:A型、B型とそれに間接的に影響を受けるAB型についてはゆるやかに割合が減少していく。これにより影響を受けないO型の割合が増えていくのである。

現在、日本人ではO型の割合がB型よりも多い。他の国には人口のほとんどがO型というところもあるらしい。このような血液型の特定の組み合わせによる小さな影響が何世代にもわたって影響を及ぼしている可能性はあると思う。そしてこの事情が国や地域ごとに異なることで最終的に異なる血液型分布となっていると考えられる。

またもうひとつの疑問であったA型、B型の割合の差(A型がB型の2倍)についてであるが、上のシミュレーションではある仮説に基づいてちょっとした細工を施している。それはA型、B型の初期値をほんの少しだけ差をもたせたのである(±0.2%)。グラフを見てみると世代を追うごとにA型、B型の差は広がっていくのが分かる。あと100世代も進めば差は圧倒的に広がるだろう。これは初期値のほんのわずかな差が「2^n次式」という非線形の複雑さを受けてその影響が世代を超えてじわじわと拡大、表面化してくるのである。