故郷に帰ったときに母がいつでも作ってくれた料理に「つゆじ」というのがある。福島県会津地方の郷土料理で、誰かに作り方を教えてもらったのだと話していた。
たいへん素朴な料理ながらなかなか奥深い味わいだった。母が亡くなってから当然誰も作る人がいないので帰省したときも非常にもの寂しい気分を味わっていたが、先日古本屋でこういう本を見つけた。
「つゆじ」という名前ではなかったが「こづゆ」という名前で非常によく似ているものを見つけた。完成イメージ写真はこれである。
小さめの浅いお椀(理想は会津塗)で出される。何杯もおかわりするのが正しいいただき方らしい。また本によるとこの料理は冠婚葬祭や祝い日に出されるもので、酒の肴の位置づけらしい。だいぶイメージが違っていた。ちなみにレシピはこれである。
素材としてスーパースターがいない。これをみただけで非常に素朴な料理であることが分かるだろう。これを参考にするとともに記憶を紐解いて「つゆじ」作りにチャレンジした。
貝柱は3個とあるが、記憶ではかなりの量が入っていた。もう少し多めにしようと思って乾物屋に行ってホタテの貝柱を探した。
驚いたことに70gでも2,000円ほどする高級食材である。1つでは足りない気もしたが2つ買う勇気も起きなかった。
豆腐は普通の豆腐ではなかった。ネットで調べてみると「つと豆腐」であることが分かった。
これを作るのには藁(わら)でくるむ必要があるのだが入手が難しいので簀の子(すのこ)で代用した。
豆腐を簀の子でくるみ、ひもで強く縛る。そして塩を入れた鍋で20分ほど煮込んで「つと豆腐」の出来上がりである。これは思いの他うまくできた。
こうして完成した「つゆじ」がこれである。
レシピにも「青味(季節のもの)」とあったのでさやいんげんを購入していたのだが入れるのを忘れてしまった。緑色がないと彩りとして少し寂しい。
味はどうかというと、かなり近いところまで来ているのだがやはりどこか違って物足りない。何杯もお代わりしようという気までは起こらない。その違いは何なのを考えていたのだが結論としてこの位でちょうどいいかもしれないと思った。これから先も折に触れて「つゆじ」作りにチャレンジしていきたいと思うが「やっぱりどこか違うなあ」を言い続けていくのも悪くない、とあらためて思ったということである。